次女の優しさ

「パパ、何年生まれ?」

次女の手紙に涙でた。しばらく遠くで水も食べ物も寝床もままならないところで仕事に旅立つ朝。

「これ持ってって」とカゴを渡される。

中には手紙が入っているようだ。

「あとで読んでね」

ありがとうと伝えて、車に乗って読む。

「がんばってね、大好き。お守り、渡しとくからもっていってね。みかんも取っておいた一個、食べていいよ。眠れなかったらこの本読んでね」と書いてある。

お守りは彼女の鉱石と、ぼくの前の年の五十円玉。昭和55年のがなかったから、54年のものにしたよと書いてある。妻の生まれ年だ。その方が効果ありそうだ。

みかんは、家の段ボールが空になっていた。食材を買い込むとき、欲しいなと思ったけど高いしやめていた。ひそかに彼女は自分の分をとっておいたようだ。それをぼくにくれた。

読めばいいよ、という本は『面白くなくて眠れなくなる数学』をチョイスしていた。ご愛嬌。

ぼくのしらないところでこうして手紙をしたためてくれていたのだな。母のように思える優しさ。感激した。

お守りはポケットにいれながら、無事に家に戻ってきた。おかげさま。たくさん嬉しかったよとお礼を伝えた。