靴で見分ける

「たぶん、靴だね」(長女)

メルは、人を見分けている。ぼくのことは親だとおもっているのか、近寄ってきて、気がくるったように靴や脚を噛んでくる。

うっとうしか感じることもあるが、彼なりの愛情表現だから仕方ない。ほんとは群れで生きたく、大きな川や池もほしいだろう。その環境から離して飼っているのはこちらのエゴである。そのかわり、身の安全とくいっぱくれのないようにしてあげたい。

今朝、またきっかり5時半に鳴き始めた。ぼくがまだ寝ながら「メル」と呼びかけたら12回、大きな「グワ」を繰り返して反応する。「早くだしてお腹へった」という叫び。彼がぼくを一番慕ってくれているといって過言ではない。生物の種類を超えた、良き相棒である。長女以外、ほかの家族は噛むのが怖くてもう近づかない。お互い孤独なのも絆を深める。

長女は足を噛まれなくなったという。彼女の友だちも。どうやって見分けているのかという話になったとき、上の発言。

「パパの靴はいたら、めっちゃ噛んでくる」という。

靴しかみてないかとおもうとややさみしい。

その気持ちを察してか、「顔も見てるとは思うけどね」と長女が付け足す。

メルはぼくの顔、身体の全体をみるとき、顔を真横にむける。目が横についているから。