次女が代々木で大一番に臨んだあと、暑さと疲れで早く東京のおうちに帰りたいと。アイス食べさせてあげたくなる。観光客向けでない、街の住民が通う人気のオシャレなところ。友人が参宮橋駅そばの「FLOTO」というお店を教えてくれる。駅から住宅地の細い道をジグザグ、アップダウンして向かう。いろんなおうち。どんな生活しているのか一緒に想像しながら。
「このおうちと、このおうち、まったく同じだね」
分譲なのだろう、小さな二階建てのお家が二つ、同じデザインで並んでいる。信じられないという表情。
「となりが全くおんなじって、いやだ。自分が一生住むおうちなのに」
「先に会社がつくって、はいどうですか?と売る順番なのよ。それでいいと思う人が買う。そのほうが安かったりするのよ。気にしない人もいるよ。家に何を求めてるかひとそれぞれ」
釈然としないようだが、次の新しいおうちに目移りしている。
たどり着いたお店は、まさに求めていたもの。アイスではなく、ジェラートなのも含めて。
小さいオシャレな一軒家風。ひっきりなしに人が入っていくが、長い行列ではない。
ぼくのようなおじさんはぼくひとり、あとは綺麗な格好をしたオシャレパーソンばかり。店の前では高級犬を一緒に散歩しながらジェラートを食べているご近所さんとおぼしき数名。入口の横にはパラソル下の席がある。
何種類もあるジェラートから、イチゴとミルクの二階建てのを彼女は選ぶ。ほかに食べたかったすももとヨーグルトをぼくの分にする。
店内の入口そばにちょこんと座りながら、食べる。もちろんどれも美味しい。
続々と入ってくるお客様たちに、東京の、この街の洗練を感じる。じっと興味深そうに見る次女。
しばらくして、外のパラソルの下の席に移動。暑いからやめとこと止めたけど、座ってみたかったみたい。
「触ってみたい」。集まる犬たちに。
「東京だし、やめとこ」
知らない人と接することはしずらい。我が家の近くだと、普通にいけるのだけど。
「東京の人は、柴犬飼わないのかな。うち、柴犬かわいいとおもう」
東京の週末の住宅街の日常の空気。この大都会に、こうして住んで楽しそうな人たちがいる。普段とぜんぜん違う分、たくさんのインスピレーションがあったことだろう。道幅は狭く、その脇を車がスレスレで走っていくストレスも含めて。
二人でした小さな冒険。一つ一つのリアクションが楽しくて愛おしい、かけがえのない時間だった。いつか彼女が東京で暮らすことがあれば、またこの店に来て、パパときたことを思い出してくれたらうれしい。
マルは、それでも参宮橋にいても違和感ないくらい、やっぱり可愛いよね、と話す。贔屓目。