質実剛健

「歳をとるほど、人間謙虚になる」(トム・クルーズの偉大さ)

「悩み、葛藤がある環境があるから、面白い映画はできる」(だから住みたいと思うカナダやオーストラリアでは傑作はできない。ストレスがなく、快適だから。一方でトロントの映画祭は市民が手作りで、とてもいいらしい。)

立派な映画人になった友人が東京から来てくれた。何かの力を信じてる人との会話は実に面白い。彼のいいところは、最初から映画業界に行かず、泥臭い営業を海外も含めてずっと経験したことだと思う。そこから狭き門の映画業界への就職にこぎつけ、自ら一つ一つ階段を登って、ついにメジャーにたどり着いた。開拓し、自らの足で歩く強さをもっている。尊敬している。ちゃんとそれを採用するメジャーもさすがである。気がつけば、彼の周りの上司や同僚はかつてのぼくが信頼していた同僚ばかりであった。

ちなみに、コンサルをやってたぼくがいうのもなんだけど、コンサルを長くやるのは、あまりよくない。もうこの歳になると話をしたいと思わない。役人も似たところがあるけど、結局、リスクをとって責任を背負って大人はなんぼ、なのである。責任の重さほど、言葉が重くなり内容が意味をもつ。

最近の建築をみていて、進歩しているかどうかわからないんだと正直に打ち明ける。映画はどうなのだろう。デジタル配信が進めど、それでも映画は、なくなってはいけないとぼくは思う。建築も映画も、社会みんなで共有するものであり続けるとき、そこに傑作は生まれるのではないか。共有されてはじめて、ゆるがない、どしっとした重さを持つ。

彼が選んだ珠玉の映画が、図書館に並ぶ。古今東西、人生一度はみといて損はない粒ぞろいのラインナップである。これは商売優先、回転優先のレンタルショップの棚ではつくれない。じっくり一つ一つ鑑賞しよう。