今日は夕日がほんとうに大きくて、雲もなく海に見事に沈んでいった。夏にむけて軌道が高くなったので、家の窓からは山が邪魔をして水平線に沈むところがみえなくなった。そこで、息子と長女を誘って家の外にでた。次女は妻と家の中でお話していて出てこない。100メートルほど左にいってアングルをずらすと、山の木の間から太陽が見えた。半分くらいがもう海につかっている。ガードレールの上にたち、そこに生えている電信柱の右に息子、左に長女が身体を固定させながら、夕日が完全に沈むところまでを見届ける。あっという間に、線香花火のような赤い光がヒュッと消えていった。
それを見届けてから家に戻ると、テイクアウトの注文をしていたラーメン屋に取りに行くというので妻が息子と次女を連れて出かける。
家の中には長女とぼくが残る。やはりまだ夕焼けがきれいで、2階の窓からずっと変わりゆく空の色を二人で眺める。長女はぼくの膝の上で身体をぼくの胸に預けてリラックスしている。夕焼けの色がそのまま部屋に入ってくるように、電気はつけない。
「地球の反対側あるやろ、そこは朝になるの?」と長女。
「そうだよ」
「もう朝早い人は、起きてるかもね」
地球の地転と太陽光の関係を説明。
「空のどこから、夜になるの?上の方からだよね?」
考えたことなかったけど、西はまだ夕焼けで赤いから、たしかに上の方からなのかもしれない。
赤色から薄暗い青色までのグラデーションとただよう雲。ため息がでるくらい美しい。
「もしもね、大きくなってお仕事でいやなことあってもね、夕日を見たらいいよ。いやなことも、夕日が全部連れていってくれる。夕日をみたら忘れられるよ。そして寝たら、また朝がくる。」
「今日もまたがんばろーってなるよね。」
「そう。綺麗な夕日をみれて、今日も元気に一日過ごせたなと思えたら、それでいいじゃんってなるでしょ。」
胸の中でうなずいている。
「ほいで、パパとママに電話すればいいよ。」
「する。」
覚えててくれるか分からないけど、もしも大きくなって親元を離れる日がきたら、夕日よそばで子どもたちを助けてやってくれ。