パパの

朝、小学校の近くまで次女を乗せる。雨が降っている。傘がないから、息子のえの壊れた黒い蝙蝠傘、ぼくがいまを使いなと促す。

「パパのは?」

ぼくは折りたたみがあると言うと安心していた。

黒い傘は不釣り合い。長女の年齢になったら嫌がりそうだけど、「ありがとう」と言って降りて、振り返って車窓越しに手を振り、差して行った。

あと数年したら、振り返ることもなくなることを知っているから、よけいに愛おしい。