父より

「パパ、何時頃産まれたの?」(次女)

ぼくの誕生日に。父に聞いたら、覚えていた。

ぼくは確か船橋の病院で産まれた。

「午前中の11時頃だったよ。お父さんは浅草橋のつぶれたスーパーの長﨑屋での仕事を終えてから、駆け付けたけど、お母さんが両手で抱いて見せに出てきた場面を、はっきりと鮮明に覚えているよ。お母さんがすっぴんだったので、それもあったからなんだろうね。」

息子が産まれたときのことを思い出す。

父も当日、楽しみと喜びに溢れた、同じ気持ちだったのかと思うと、そのあと、ずいぶん親不孝してしまったと反省する。