赤身

晩ごはんのとき、息子にこれまでいかに愛情を注ぎ、大事に育ててきたか妻と一緒に本人にいう機会があった。目頭が熱くなる。親バカなりに彼は心技体がバランスよく育っているように感じるから十分だ。娘たちも横で聞いていた。

翌日。塾に迎えに家族みんなで行く。妻が車を降りて塾にいく。二人で戻ってくる。車内からみて、二人の身長がもうそこまで変わらないことに気づく。足も25センチの靴を履くようになったそうだ。息子に何が食べたいか訊くと悩んだあげく「焼き肉」との答え。いつもはいかないはじめの、すこし高いところにいって奮発する。赤身の和牛が美味しいらしく、たくさん食べていた。ぼくより食べていたかもしれない。オレンジジュースもその日はおかわりしてもいいと許す。ニキビがポツポツでている。来年はもう中学生だ。大きくなった。

父ちゃんの人生で一番迷ったときはいつか、寝床で話す。何度か話をしたつもりになっていたけど、わかっていなかったようで尋ねられた。2012年12月。悩んだあげく、自分の仕事より子どもの環境を優先する決意をしたこと。こっちに戻った最初の年はとてもつらかったこと。今はそれに悔いはなくて、そのかわりもう、そこは誰に何と言われようとぶれない。出世したければ東京でしている。それよりも大事なことがある。自分の祖父母や親からうけた恩を子どもたちに返すこと。この父の生き様から本人はどうしたいかは自分で決めればよい。いつしか寝息になっていた。