長男は野球をしないけど、甲子園はくらいついてみてる。ぼくが昔から好きで見るから、影響を受けて、興味を持った模様。普段テレビを見ないから、テレビを見れるのも新鮮なのかもしれない。
どっちのチームがここから近い?ときいてくる。近い方を応援する、が彼のなかの方程式のよう。シンプル。地元以外は地縁もないし、知人もいないから、心理的な距離というのは彼にはまだないので、それで十分なのだろう。
とはいえ、地図上の距離なのか、所要時間なのかとか、細かいところまで気にしはじめるとややこしい。秋田と千葉の比較とか、よくわからない。ということをいうと「所要時間じゃなくて、距離ね、距離」とくぎをさされる。でもさ~、距離だけでなく、親戚が住んでるとか、初出場とか、まだ優勝したことないとか、そういうのを手掛かりにしてもいいんじゃないのかな、というと、『わかった』という。素直。まだこの年齢だと、父ちゃんのいうことにちゃんと耳を傾けて、そのまま影響を受ける。シンプルで、素直。かわいいもんだ。
今年は、ルールについて、質問攻めだった。聞かれてみて初めて気づいたけど、野球って、すごいルール、複雑なスポーツなんだな。
サッカーだったら、「ボール、ゴールに入れると1点。多く入れたほうが勝ちね、以上」と教えたら、それでほぼ観戦は成り立つ。
でも、野球って、一言で言えない。「ホームベース、踏んだら1点。で、多く踏んだほうが勝ち」と説明しても、よくわらかない。ホームベースを踏むまでのハードルが、やたら多い。フライが上がってる間にランナー走って、ホーム踏んじゃなんでだめなん?それに答えるには、ランナーも説明しなきゃだし、そのためにはヒットを説明しなきゃだし。
「なんで、さっきはランナー2塁まで行ったのに、今回は1塁で止まったん?」
「アウトになるから、止まったんじゃない」
「アウトって、どういうときになるん?」
アウト、これもまたちゃんと説明しようとしたら、ややこしい。ベースに触れてないとランナーはボール、タッチされたらダメなんよ、というと、んじゃフォースアウトってなんじゃいとか、すぐ例外がみつかる。長男もすっきりしないかんじ。
三振の説明もてこづった。いわゆる見逃し三振、バット3回目、空振りしてないのに、なんでアウトなん?それは、ストライクゾーンってものがあってですね、という説明が必要になる。
ファール(なんでストライク扱いになるの。でも、何回打ってもアウトにならない、なにそれ?)、盗塁、牽制球、犠牲フライ、スクイズ、代走。一つ一つ「何?」って聞かれたら、矛盾なく言葉にするの、やっかいだし、疲れる。野球が嫌いになりそうだ。
タッチアップとか、勘弁してほしい。そもそもなんでそんなもの、思いついたし、みんなで「それ、アリね」ってなったよな。
隠し球とか、振り逃げとか、もういい加減にしなさい、ですよ。
野球が実はメジャーなスポーツじゃないってのも、分かる気がした。インストール時間かかるこれ。
小さい頃から自然に身体で覚えないと、しんどいわ。そういえば、むかし、おばあちゃんが70歳を過ぎてから、多分松井秀喜が出てたから、いきなりプロ野球を見だして、周りからよくルール覚えたね、って関心されてたな。ヒットエンドラインを失敗して、「あんた―、いま走らんとだめなとこやがいね、ダラや~(あんた、いまそこ走らなきゃいけないところだったでしょ、アホや~)」とかテレビにむかって手をたたき大声あげてた。
でも、この複雑さって、多分、野球というスポーツができたての頃、野原で木の棒と布の球でやってたとして、みんなで「このときは、こうね」って一つ一つ、合意しながら決めていったと想像したら、なんか楽しげ。ランニングシャツと短パンを来た少年少女たちが、「それはズルい」「いや、アリだ」とかいいながら。スマートじゃないけど、今受け継がれてるルールって、沢山の試行があった末に残ったもので、それなりの公平さをもちつつ、試合が盛り上がる絶妙なバランスなんだろうな。
辛抱強く説明したおかげもあってか、今年も長男はいやにならず、決勝まで楽しんでみてて、話相手ができて父ちゃんも満足。でも、やりたいとはいわない。別にしたいとまでおもわないのか、既に他のスポーツの習い事が沢山でこれ以上はパンクするよと普段から言ってるから、遠慮してるからなのか。
キャッチボールまたやりたいね。そして、甲子園、来年一緒にいけるといいな。父ちゃんもいったこと、まだないし。
「なんで、負けたら泣いて土持って帰るん?」という質問もあったね。その理由は、あそこに行ったら、きっとわかるよ。