次女の略奪

夕食の準備にキッチンに立つ。スペアリブを延々と煮込んでいる。熱気がこもる。暑い。冷蔵庫にあるシークアーサーを飲むことにする。炭酸水もあったから、割って氷で飲むととても気持ちよかろう。

ということで作って飲むと案の定美味しいと満足していたら、通った長男が何を飲んでいると質問してきて、シークアーサーだと答えると「なにそれ、おれも飲んでみたい」と当然なる。好奇心は大事にしてあげたいので差し出す。

それを目ざとく見ていた次女。やはり「わたしものんでみたーい」と間髪入れずいってくる。全部飲まれるのは勘弁なので、ペットボトルからコップに一部を入れて渡そうとしたら「そのままがいい」とペットボトルごと渡せと主張。しぶしぶ従う。

グイグイ飲んで、結局全部飲み干して「全部のんじゃったもんね〜」と誇らしげ。

こっちは結局一口しか飲めていない。この略奪王の目の光ってるうちに持ち出したぼくが悪うございます。

シークアーサーはどうかんじたのかというと、飲みながら「これって、りんごジュースのともだち?」と聞いてきた。へぇ。

「リンゴジュースに似てる?」

「うん」

こっちの目をみて深く頷く。

37年生きても感じたことのないそんな表現に出会えるなら、略奪されるのもわるくないか。

広告を非表示にする

パーマン

子どもたち3人、パーマンをみている。ぼくら親子が小さなときみたのと同じもの。

30年近くたった現代の子どもでも、ぜんぜん面白いのだからすごい。

朝、お皿を洗いながら、「息子はパーマン、長女はパー子、そして次女は〜『ブービー』」といったら、次女の表情が急に悲しそうになり、大きな声で泣き出す。

この手の冗談は通じなかったらしい。

「ごめんごめん、パー子がよかった?」

大粒の涙をこぼしながらうんと大きく頷く。

「じゃ、パー子ね」

長女に次女がパー子でいいか訊くと、さすがお姉ちゃん、この状況を察して微笑みながらウンと快く承諾。

パー子になった次女は安心したのかすぐに泣き止む。

キャラだけでなく、サイズからいっても、ブービーなんだけどなぁ。

 

 

広告を非表示にする

社会科見学の一コマ

息子が社会科見学で職場の近くの公園で昼ごはんを食べているらしいので、昼休みに公園にみにいく。近づくのは気が引けるので、100メートルくらい距離をとって観察。

先生のそばできちんと列にならんでいる集団と、公園を走り回っている活発な集団に分かれていて、息子のことだから遊び回っているだろうとおもうが、息子の友だちはいるけど、見当たらない。

列のほうに目をやると、同じ制服をきているからよくわからない。

走り回っている子たちに列の集団が先生と一緒に声をかけている。「速く戻って列に並べ」といった趣旨だろう。

その中に、息子の「早くこい!」という声があった。意外に頼りになる存在なのか、息子はとビックリしながら、声の方に目をやると、前の列から3列目くらいに行儀よく座っている。てっきり列を乱したり、集団行動の足を引っ張っていると想像していたから、ちょっと意外。

朝に家を出かけるときに「会いに行けたら会いに行くわ」といっておいたので、このまま気づかれなかったら帰ったときに「父ちゃん今日おらんかったやんか」と責められそうなので、存在は伝えることにする。

列の前の方に位置を移動。列の先頭の先生の背中の向こうで体育座りをしている息子を正面から捕える。

息子のとなりに近所の友人が座っていて、先にぼくに気づく。必死で息子の背中をトントンと叩いて教えようとしているが、息子はほかの友だちのと話に夢中でそれどころではない。

手を振りつづけること1分くらいして、ようやくその友人の合図に気がついて、前をむいた。すぐにぼくに気づいて、どういうリアクションするかなと思ったら、こっちが恥ずかしくなるくらいに大きな声で「父ちゃん!」と声をあげて手を振る。ほかの友達、そして先生たちの視線もこっちにむき、ちょっと恥ずかしい。「こ、こんにちわ〜」。

息子も恥ずかしがって、こっそりアイコンタクトをするのかとおもいきや、素直にまだ感情を出した。実に真っ直ぐだ。ぼくは何を照れていたんだろう。

とはいえ、あまり注目を浴び続けるのも空気を読んでない気もするので、散歩しててそのままどっかいく体で歩きながら集団から少しずつ離れる。どんどん息子の姿は小さくなる。

やがて、列は立ち上がり、前進を進めた。後方から見送る。友達たちと賑やかにやっている姿をみて、きっと家で「楽しかった」というのかとおもうと安心する。ひと目見れてよかった。

帰宅して、妻に息子が「早くこい」といっていた下りの話をしたら、やけに喜んでいる。彼女も迷惑をかけていた方だと勝手に思い込んでいたらしい。

息子に「おまえ、そういうこというんやな。父ちゃん聴いたわ」といってみたら、「だって、ただ並んでて、暇やったから。声でも出すか、って思ってね。早くバスにもいきたいし。」とのこと。

「暇やから、声でも出す」。全く予想に反する動機。特にリーダーシップがあるとか、先生に気を遣ってとかじゃない。むしろ、自分のため。

とはいえ、実にその朴訥としたかんじは息子らしく、妙に納得がいって、むしろホッとした。

なんとなくわかる

ふと息子の足の爪が伸びていることに気づく。そのことを指摘すると、足の指を手で刺しながら、

「ねぇ父ちゃん、これ、親指やろ、で、これは?」

親指の隣の二番目の指を指して、

「これ、中指、ってかんじせん?人指ゆびねんよ。」

三番目の真ん中の指をさして、

「これが、中指。そんなかんじ、まったくしないよね。」

手の指の感覚と比較すると、たしかに、足の中指の存在感はほぼなくて、薬指が二本あるような感じ。

全く同感や。

「父ちゃんも、同じこと、感じてたことあるわ。」

妙に通じ合う。

これって、みんなそうなのかな。

広告を非表示にする

無言の主張

朝、長女だけ妻が先に保育園に送り、寝坊した次女だけを後から送ることになった。起きて、バナナ食べて、もう出ないと間に合わないけど、カレーも食べたいということで、遅刻はすでに決まり。保育園に電話。

そろそろ行こうってなって、ガレージにいって車のドアを開けてもなかなか乗ろうとしない。乗れないの?と聞いても「うん」という。いつもはすぐ乗っているのに、動こうとしない。

もしかして。「歩いて行きたいの?」と聞いたら「ウン」と頷く。うつむきながら、「あるいていきたいの〜」。なるほどそうだったのか。

確かに天気がいい。昨日は雨だったし。

着くのはさらに遅くなるけど仕方ないから、そうすることにする。歩くことが好きなのは歓迎すべきこと。道中の楽しみが多い。

次女と二人で歩くのは初めてだ。しばらく手をつないでいくけど、「抱っこする?」というとこれまた「ウン」と頷くので、持ち上げる。重たくなったものだ。あっという間に子どもは大きくなる、と先輩パパさんがいっていたけど、ほんとうにそうだなとおもう。3年前はまだ生まれてなかったのに。

雑草に白い花が咲いていて、先生に見せたいから摘め、と指示があるので折って渡してやる。ちょうど花の先がぼくの鼻の前にきていい匂いがする。

「鳥さん、速かったね」と後ろから前に飛び去っていく鳥を目でおいかけている。いつもと違う曲がり角を曲がると「こっちじゃないよ」と不安そうになって、だけどその先はいつもの道に繋がるとわかると納得する。

だんだん抱っこしている腕が汗ばんでくる。今日は暑くなるな。

保育園につくと、先生もすぐにわかったのか「お花、生けようか、おいで」と教室の中にすぐに連れてってくれてスムーズにバイバイ。

家に帰ってきたら、次女が持っていたはずの水筒が玄関に置いてある。まずい、わすれものだ。

広告を非表示にする

帰宅時

自転車で坂をかけあがり、家路につく。夕日が遠くの海に沈みそうだ。夕日に間に合うかどうかはぼくにとって大きな違いで、夕日をみながらのチャリは気持ちが晴れ晴れする。

道すがら、見慣れた後ろ姿を見つける。ブレボーでゆらゆら前進して、手にはキックボードをもっている。公園で友達と遊んでいた息子だ。妻から言われた時間になったので、急いで帰っているのだろう。キックボードを持っているせいでちょっとの坂も苦労しながらブレボーを漕いでいる。たぶん、走ったほうが速い。

後ろから声をかけるとうれしそうに振り返り、「おれ、キックボードもっとるから、なかなか進まない」と説明してくる。見たらわかる。友達に貸してあげていたそうだ。

キックボードを持ってやると「ありがと」といって、いつもの調子のスピードになる。

ぼくの自転車よりは遅く、後ろから必死でついてくる。

夕日を浴びながら、帰宅時に息子と会って帰る光景。サザエさんのマスオさんとカツオくんを思い出す。あっちは甥っ子だけど。二人ともお腹が空いた。今日の夕飯な何かしら。

広告を非表示にする

ワイルド

いい天気だし、夕食の支度もすませたので、久しぶりに歩いて保育園にお迎えにいく。夕食はスペアリブをグツグツ煮たやつとコンソメスープ。なかなかの出来栄えで気分上々。

長女も次女も寄り道三昧で、タンポポの綿毛、鳥や虫をみつけては立ち止まる。普通に降りればいいものを、階段の手すりに登って滑り降りようとして何かと時間がかかる。散歩している犬がいれば駆け寄って絡む。この調子だと、家に息子が先に帰宅するだろう。

なかでも驚いたのは、長女はある背の高い草をおもむろに抜いて、根本の葉っぱを手際よくちぎり、根っ子のあたりをむしゃむしゃ口にいれて食べだした。そこら中に生えているので、歩いてはみつけ、食べることを繰り返している。その手つきの慣れた感じは今日が初めてではない。ちょっとしたベテランだ。

それ、何を食べているの?と訊けば「スイバ」という名前だそうだ。

「どんな味がするの?」

「酸っぱいよ〜」

酸っぱいの好きだっけ。ぼくも食べさせて、とお願いしようか迷ったけど、やめとく。

だれに教わったかは聞くまでもない。一応確認すると、やっぱり園長先生だった。自然体験教室ではそこまで習うのか。

何もかもお姉ちゃんの真似をしようとする次女だけど、それは真似しなかったな。

夕日が海に沈みそうなころ、ようやく家にたどり着く。案の定息子と友達は先に帰って、家の前で待ちぼうけをしていた。

長女がたくましくみえた日。

広告を非表示にする