スイミングとファミレス

近所のファミリーレストランは、誕生日の子にアイスかケーキをプレゼントしてくれて、ハッピーバースデーも歌ってくれて、写真もとってくれる。店内にBGMも響き渡る。だれがはじめたかわからないが、よくあるやつだ。

気軽な気持ちで息子の誕生日をここで祝ったことがあって、以来我が子たちは誕生日といえば「コレがいい」となったもよう。どこに食べに行きたいかと聞けばここがいいという、食べるものではなく、歌がほしいのだ。

昨日は娘たち、はじめてのスイミング教室であった。先週4日間の体験にいって、案の定終わったら「通いたい」と二人ともいいはじめた。長女にいたっては「将来、スイミングのコーチになりたい」とまた夢が変わっていた。我が子たちは体験させたらたいてい「やりたい」という。その好奇心は褒めてあげたい。

ファミレスもその近くにある。帰りに寄ることにしたところ、次女の誕生日もお祝いしてほしいということになった。誕生日はまだ来週だが、またここに来ることもなかろうという妻のはからいであった。長女と次女は頭が濡れているので、タオルの三角帽をそのまま被っている。今日でそれぞれ最初の級が決まったそうだ。来週からは別のコースに分かれるのかもしれない。「毎月テストがあるんだよ」と妻。妻はスイミングを習いたかったけど習えなかった少女時代だったらしく、スイミングのオリジナル水着に身をつつみ、がんばる姿を見るのが自分のことのようにうれしくて仕方ないらしい。これからの進級も楽しみだそうだ。

「息子の頃もあったやろ」とぼくが指摘する。「そうだそうだ」と息子。「そのときもうれしかったよ」と妻はいうが、娘になると自分が投影できてまた違うのだろう。今日は女性のコーチだったが、級が上がると今日隣で指導していた男のコーチになる。それを長女も次女も「こわい」と恐れている。

「『へたくそ』って言ってた」と次女。顔が怯えている。

「ビート板でたたくんよ」と長女。

「『教え方が下手くそ』といってやれ」とぼく。

「たたくコーチ多いしな」と息子。そうなのか。

それにしても、10級にもまだなっていない娘たちを前にすると1級になって卒業した息子がえらい先輩に感じる。何度もテストに不合格になりながら、叩かれながらもよく続けたものだ。

 

娘たちにコンソメスープを何度もおかわりさせられる。

そういうわけで、次女にはアイスが最後運ばれてきた。お兄さんとお姉さんの店員さんがひとりずつ、タンバリンを渡して合計6名が次女を祝う。お兄さんは極めて事務的である。最後の「ハッピーバースデートゥーユー」のあと、「おめでとう、パチパチ」はやるべきだ。しかしそれを待たずして「トゥーユー」の直後にぼくのタンバリンは取り上げられた。忙しいのだろう。

そんなこともつゆしらず、次女はすっかりご機嫌で、一口ずつ分けてくれる。嬉しそうにアイスを最後の一滴まで大事にたべる。その姿に長女が「ずるい」とすねはじめる。そうやって、また来たくなるわけだ。

レバノンの大惨事とヒロシマの話を少しする。これまた次女が「怖い」と大粒の涙を流して泣き始めた。ぼくがオナラの話をしたら泣き止んだ。

息子はアガサ・クリスティを読んだり、店頭にあるロードバイクの600円のフィギュアをみにいったりしてなかなか終わらず、次女のアイスよりも遅い。ハンバーグの脇のふかしたジャガイモが手つかずだ。「もういらないのか」と聞くとうなずく。「私が食べる」と長女が食べ始める。ぼくはスープバーとドリンクバーでお腹がチャプチャプである。

長女のワガママは分かってはいたが、疲れから来ているものだ。その証拠に帰り道の車でコテンと寝てしまった。昼間も息子の友だちが遊びにきたのに同伴して自転車で家の近所を走り回っていたし。

 

家に着いて着替えさせて歯を磨かせて長女をはなれの寝床につれていくが、珍しく寝付かない。妻が届いた2段ベッドを組み立てていて「手伝って」というので結局二人でおもやに戻る。次女がまたヒロシマの話を思い出して「怖い」と泣いている。長女が自然と寄り添ってなぐさめようとまたオナラの話をしたり、絵本を読んであげたりしている。お姉ちゃんである。その傍らでベッドが妻により完成し、新しいベッドがうれしかったのであろう、結局娘二人と妻の3人でベッドで寝ることに。だけど、熱帯夜で上の段は暑かったらしく、次女はベッドではなくフローリングに転がって寝ていた。クーラーをつけてやる。

 

来週の誕生日はどこにいくのだろう。