三日月

夕食のとき、ぼくの席から吹き抜けのマドを見上げたらその先にちょうど三日月がきれいに見えた。息子が双眼鏡をもってきて見る。クレーターがボコボコとみえるそうだ。ぼくもの覗いてみてピントをあわせてやると、思いの外くっきりとものすごく近くに見えた。長女も次女もわれもわれもと続く。

「月って、双眼鏡で見ていいの?」と不安そう。太陽は見ると眼が潰れると注意したことを覚えているらしい。太陽と月のちがい。

「クレーターって、なに?」と二人。

「宇宙人がいたらいいのに。なんか鼻があって、わらっているみたい」と長女。花王のマークのようにみえるらしい。

「どこから太陽が照らしてるかわからないな」と息子。

「下の方からやろ」とぼくが返すと「それはそう分かっとるからやろ。何もしらなかったら、どんな形でどこからあたってるかわからない。」とのこと。

次女は「月って、冷たいよ」となぜか知っている。

「月をボーリング調査してみたい。地層とかあるのかな。」と息子。

長女と次女はそのあと絵を描いた。二人の三日月とも顔になっている。

寝床にいったころ、三日月は随分傾いていた。

息子が「今日の月は0時ころに海に沈みそうだ。」と推測している。

ついでに「そういえばさ、日が傾くというけど、あれって夕方のことやろ。朝のとき、どうして日が傾くっていわないのだろうね。かわいそうに。」と朝日に同情していた。