『あらくれ』/『パリ残像』

徳田秋声の『あらくれ』、木村伊兵衛の『パリ残像』。どちらも市井の人が主役の作品。日常、そこに生きる人々。年の功だろうか、これらに誠実に向き合う作品の良さがわかってきたし、それをテーマにした創作がもっとも高度だと思うようになってきた。インパクトを狙って特殊さに走るのは簡単だ。それより、一見なんの変哲もない普遍的な日常を扱って心を動かすことを追求するほうが難しいし、結果として永く残るものになる。