読書めも〜『Who Gets What〜マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学』

<Who Gets What〜マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学/アルビン・E・ロス著、櫻井祐子訳/日本経済新聞出版社/2016>

ユダヤ口伝律法『タルムード』創造主は万物をつくったあとは、「縁結び」をしているといった。求愛と選別。
・「ともに(相互に)」がキー。一方向ではない。
コモディティ市場では「誰が何を手に入れるか」は価格のみによって決まる。何を手に入れるのか決めるのは自分。お金さえあれば手に入れられる。
・クリアリングハウス(情報交換機構)
・戦略的意思決定=他人の行動によって影響を受ける意思決定⇔マッチメイキングは己を知ることが主眼となる
・「自由主義と言うとき、まったく成約のない市場を考えるのではなく、正しく機能を導く、周到にデザインされたルールのある市場を考えるべきだ」
・オークション:落札者が2番目の価格で買う=長い歴史で信頼を得た公平で、双方が得をするシステム
・小麦市場:農家と消費者のマッチング市場からコモディティ市場に1800年代に以降した。
・時限つきオファー:「このような状況がでは、最適な決定を下せるだけの情報を持っている人が誰一人いない」
・「関係者間の連携を多少なりとも図り、いくらかでも前進するには、多くの利害に配慮する必要があった。まさにフットボールのように、1ヤードずつの前進を積み重ねていったのだ」
・「暴走はどんな原因より、自制の失敗に原因がある」
・市場の暴走は異例ではない。「多くの市場で暴走は最初はゆっくり進行するが、ある時点を境に突然堰を切ったように加速する」
・マーケットデザインを通して暴走を食い止め、逆転することができた。
・「オファーを受ける側に多少の主導権を譲ることによって、早期オファーを出す誘惑に駆られる側から自制する必要をとり除くことにあった」
・市場が均衡している
・「このクリアリングハウスは待つだけの価値がある、厚みをもった市場を提供しているのだ」
・「どのようなデザインが成功するかは、参加者の文化や心理状態を初めとする、市場の細部(ディテール)によって大きく変わるということだ」
・『ほんの少し』抜けがけするのは実は最も魅力的な選択肢なのだ」
・「だからこそ、自制心では問題を解決できないのだ。あなたがコントロールできるのは自分だけで、他人の抜けがけまでは阻止できない」(例:オクラホマ・ランド・ラッシュの例、スーナーズ=抜けがけ者)
・時間の取引=速度、と価格の取引
・「近代化が進むとともに古い不快感が捨てられるという単純な話ではない。古い不快感がよみがえることも、新たな不快感が生じることもあるのだ。」
・負の外部性
・取引による利益:自発的な取引の増加は相互に利益をもたらす
・お金で売買することが避けられるケース:物象性(愛はお金に換算できない)、強制(お金になるからと、したくないのに臓器売買をせざるを得ない)
アメリカは腎臓の提供を求めているのが10万人。提供されているのは1.7万人
・「市場に関していえば、悪いデザインがはびこるのは、よりよいデザインが見つかるまで時間がかかるからだけでなく、市場参加者の多くが既得権益を持っていて、市場全体の変化を整合させるために多くの利害を調整しなくてはならないからでもある」
・「マーケットデザインは、市場を必要とする人たちに市場の恩恵を届ける方法について考えるきっかけになる。不快な市場を許すべきかどうかは、白黒で割り切れる問題ではない。」
・「禁止は市場をコントロールする方法の一つでしかなく、市場を阻止する法律を定めるのは簡単でも、それを実行するのは難しい。(中略)相手と取引したいと望む人たちは強力な勢力になる」(例:禁酒法が生む腐敗、臓器移植の恩恵)
・フリード・ハイエク『隷属への道』、自由主義宣言、自由主義者は「庭師」。整える役割。「なんでもあり」ではない
・マッチング市場:価格がすべての役割を担わず、また誰と取引するかが問題となる市場
・言語と市場は人間が誕生したときからあるもの。