破壊力

寝る前、はなれで一人横になってると長女がやってきて「踊ってるよ」と教えてくれる。

中庭を隔てたむこうの母屋の和室をみると、しまっていたブラインドかまるで舞台の緞帳のように上がり、その先で次女が踊っている。

ボンボンを両手にもっていて、元気に振り回している。いま練習中の運動会の踊りを曲に合わせて妻に見せている。

なんともその姿が愛らしくて、母屋に戻る。ももクロの曲だとわかる。片手を伸ばしたり、クルっと回ったり、ジャンプしたり。顔ははにかんでいる。

キュン死にとはこの気持ちのためにある言葉だ。疲れとかいやなことととか全て吹っ飛ばして元気になる破壊力。スカッと気が晴れる。

どんなエンタメよりも、我が子のたどたとしい踊りが勝るのだ。あんな小さくな赤ん坊だった子に、頼もしさを感じるという感動。親冥利につきる瞬間。

終わって妻もぼくも抱きしめたら鼻の下を伸ばすいつもの嬉しそうな顔をしていた。

泣きそうになったが、それは本番までとっておこうと我慢する。

ちなみにボンボンは明日妻が職場でつかうためで、長女は次女が踊っているときもビニールテープをひたすら割いて手伝っていた。長女は本番見てねと余裕のかんじ。長男も本を読んでいるが、チラチラみている。「本番、おまえも見たくなったろ」というと「うん」と素直な返事。

本番は緊張して表情が固くなってるのだろうか。今日みたいに笑顔で踊ってくれたらいいな。