シーズン開幕

息子のテニスのクラスが一個あがって遅いスロットの時間になったので、将棋のない週の土曜の朝は少し時間に余裕ができた。

快晴なので朝起きて布団を干す。そしてまだ日が低い今のうちに芝刈りをせねばならない。太陽と追いかけっこである。

今年本格的に芝刈り機を可動させるのは初めて。先に高いひょろっとしたペンペン草やシロツメクサタンポポを手で抜く。シロツメクサは今が満開で、とんでもない繁殖力を見せていてあちこちに勢力を拡大している。でも「高麗芝の根っこはシロツメクサよりも強いから、はじめの2、3年がんばってシロツメクサを抜いていれば、そのあとは大丈夫」と香山先生がおっしゃっていた。2年目の今年が勝負である。せっせと抜く。手を動かしてもくもくとやっているとだんだん頭がスッキリしてくる。先生とお会いすると「草むしりって、楽しいよね」という話題によくなる。手をかければかけるほど良くなっていくし、すぐに成果がみてとれて手応えがあるし、それぞれの草の生え方をみているとそれぞれの生存のための進化みたいなのがみてとれたり、虫のおウチを見つけたりで面白い。

学生のとき建築の図面を描いていたころ、建物の輪郭を書き終わったあと「影付け」といって陰影をつけていって立体的になるように装飾を施す工程があって、黙々とひたすら線を重ねていくあの作業が大好きだった。地道だけど、線を1本重ねるごとに、確実にその絵はよくなっていくのである。時間を忘れて夢中になれた。そしてそういう時間ほど、実は頭の動きもよくなるもので、机に向かってうんうん考えて勉強しているよりも脳は回転している気がする。自分の設計案について、自分はこういうことを表現したいのだなとか、考えがまとまってくる。

ちょうどいま赤紫色の大きなバラがツゲの下に生えているのだけど、その回りに雑草もバラを守る取り巻きのように生えている。バラはきれいなので残したいし、トゲがあるからそのエリアには手を入れにくい。バラのそばの雑草は芝生にポツンと生える雑草より生き延びやすいのである。だけどぼくは公務員によくいるのだけど、バラのような強い者のそばに位置してヘコヘコしながら自分の身を守ろうとするスタンスの人はあまり好きになれないので、そういう草はまっさきに、とっとと抜く。もっともその草にしてみたら、毛頭そんなつもりはなくてたまたま生えただけで、罪はない。だけど日々辟易としているぼくにはそう見えてしまうのである。

雑草をむしり終われば、いよいよ芝刈り機を回せるタイミングになった。これもまた楽しい時間で、ひたすら伸びた高麗芝が同じ高さに刈り取られてみるみるほどよい秩序が芝生の輪郭に現れてスッキリする。それぞれの芝の先端の点が、同じ高さになるから、そこに一つの面ができる。それが人の視界には秩序と認識されるのだろう。高めの芝刈り機は2年目も快調だ。こういう日常で身近なアイテムには節約せずにお金をかけるというのはいいものだ。

そうだと気づいて靴を脱いで裸足になってみる。実に気持ちがよい。芝生の感覚だけでなく、芝刈り機に溜まった草を捨てにいくときに丸い石を敷き詰めたガレージを横切るのだけど、その丸い石たちが健康器具のように足を押して痛い。でも健康になりそうだ。子どもたちに比べて、オトナになると裸足の機会がすくなくなるけどあれは損をしているのではなかろうか。大地と直につながった感じが心地よい。

次女は知らない間に屋根から庭に出ていたお隣のお家の友だちに話かけて遊びにいく話を取り付けて遊びに行って、隣のお家のお庭から顔を出す。足の逆剥けが気になったようで、小さな絆創膏を持ってこいというので息子にお願いする。

長女がピアノから帰ってきて、「パパ、裸足でやっとるん?」と嬉しそうだ。芝刈り機をやりたいというからやらせてみるけど、なかなか前に進まないし、ぼくも少し進めたいところがあるので「パパにやらせて」というと退屈したのか家に入っていった。

モンシロチョウがヒラヒラと飛んできた。きれいになった芝生に誘われたかのようで嬉しくなる。飛ぶ先をみるとシロツメクサに行きついた。

ご近所の小さな男の子を散歩する父子も通りがかって芝生を褒めてくれてご機嫌になって今日の作業は終了。洗面所で坊主頭に水をかける。頭も刈りたい衝動にかられる。昨日飲み忘れたコーヒーが冷えているので氷をいれてアイスコーヒーにしたら意外にいけた。息子をテニスにつれていく時間である。夏は芝生と頭をひたすら刈るのである。

最近の朝

先に起きた娘たちが、「パパ、いちごの花、咲いてるよ」と教えて起こしてくれたのが一ヶ月ほど前。ここ数日は小さなかわいいいちごの果実ができるようになった。早くとらないとはらぺこ青虫の絵本のように虫に食べられて穴が空いてしまうので、小さくてまだ赤くなりきってなくても採るようにした。一昨日は3個採れたから、子どもたちが1個ずつ仲良く食べることができた。今朝は長女がみつけて採ったのが息子が学校に行ったあとだったから、1個を長女と次女で半分に切って食べさせた。今日は歯科検診があるので、出る前に歯を磨いた次女は「帰ってきてからにする」というので、「帰ってきてからだと美味しくないから食べな。また歯はみがけばいいよ」と勧めると少し考えて「クチュクチュペーだけする」といって食べた。念のため口の中をみたらすこし歯に詰まっていたから歯ブラシでとってやる。

小さくても美味しいらしい。「無農薬のイチゴは貴重だね」というが「ムノヤクってなに?」と長女。

加えて、メダカにエサをすりつぶして与えるのもここ数日の長女の日課になった。今朝は隣の家の友だちも昨日約束していたみたいで、メダカの朝食を食べる様子を見に来ていた。

 

 

まさか自分が

オレオレ詐欺にまさか自分が引っかかるなんて、ありえないと思ってたけど、見事にインターネット詐欺に引っかかってしまった。

夕食時に妻が「今日サッカー日本代表の試合、してるんだって」と新聞でみつけて、アガサ・クリスティーを読んでいた息子に話かける。夢中に読んでるから聞こえないようだ。別にいいんじゃないかと思っていたけど、息子が一息ついたときにまたいうと、息子は当然「みたい」という。

我が家はテレビがないので、車でみるかしなきゃいけない。ネットで生中継をしているんじゃないかな、と探しはじめる。オリンピックや高校野球はそれでみた。ワンセグでもいいのだが、あれは解像度が悪くて以前息子から「これじゃわからん」とクレームがあった。今回はきれいな方で見せてあげたい。

「サッカー 日本代表 生中継」で検索してみると、今思えば、どうして疑わなかったか不思議だけど、「ここで見れます」というリンクを貼ったブログを発見。海外のサイトのようだ。

そのリンクをクリックしたら、テレビ朝日のロゴと日本代表の写真がドーンと出てきて、「見るためには会員登録を」という。

妻から「ね、今パソコンで見るための作業してるの?」といわれ、「早くしろ」といわれていると解釈して急ぐ。早く息子に見せてあげたい気持ちで気が急く。

「会員登録」をクリックしたら、「クレジットカードの登録を」とある。さすがにおかしいぞ、と思うけど、左に「クレジットカード登録したって、課金はいっさいかかりません。安心してください!」とある。いつもは疑うはずなのに、急いでいるからカードを取り出してセキュリティ番号まで入力してしまう。しかも、「セキュリティも万全です!」と書いてある。追い詰められたとき、この言葉を疑うのではなく、信じるようにポジティブ解釈してしまうものなのだな。今思えば、暗号化のSSLの表示とかはなかった。でもあのときは信じてしまった。さらに、あの日本語、ものすごく不自然で、たどたどしかった。

しかし、こっちはサッカーを早く見せたい一心なので、「次に進む」をクリック。

そこは垢抜けたサイトで、Axleleといかいうロゴが出てきている。映画や本やら音楽やらビデオのサムネイル画像がたくさん並んでいる。「ようこそ最高なあなたのエンターテイメントへ」。テレビ朝日の子会社かしら。こんなアプリを最近はテレビ局もやるようになったんやねぇ。と、ここでもぼくは、気づかない。

検索ボックスで「サッカー」と入れても「結果はゼロ件です」と表示される。ん?おかしいぞ。テレビ朝日はどこへいった。

 

右上に「いま5日間無料トライアル期間です。もしも解約するならこちらからしてください。」というタグがある。あれ、無料じゃなかったのか。サッカー見終わったら、解約しなくちゃな。

と思っていた矢先、登録したEメールに「アップグレードありがとうございます」というメールが届く。3ドル弱が課金されますと請求書になっている。英語と日本語が混ざっている。日本語は明らかにネイティブじゃない。

メールの下には「わからないことがあったら、躊躇することなく電話かメールしてくれ」とある。外人のコールセンター風のヘッドホンをしたお姉ちゃんが笑った画像がついている。電話は国際電話の番号で、明らかに日本の番号ではない。1-からはじまる。最近はテレビ朝日も海外にアウトソースするようになったのか。ボーダレスやねぇ。とここでもまだどこか信じたいと思っている自分がいた。

 

でも、さすがに いよいよこれはどうも怪しいと思って、

「なんか、怪しいサイトにつかまったみたい」とぼく。

「え?さっきから、何やってるの?」と妻。

「いきなりクレジットカード出して何やってるかと思ったわ。あんたらしくない。」

「う、うん、早くみせてあげたくて」とぼく。

 

「別にそんなこと頼んでない。ワンセグでいいのに」といって、ワンセグで視聴しはじめる。「いやネットのほうがきれいかと」と細い声を絞り出す。情けなくなってくると同時に、だんだん冷静になってくる。

 

ひとまず電話してみるか、と。ぼくの携帯がみあたらなかったので「ね、電話かして」と妻にいうが嫌がられる。かけてみても、つながらない。

メールにアメリカの住所がかいてあるので検索すると「ペーパーカンパニーのアドレスです」と出て来る。Googleで「Axele」で検索しても全く出てこない。

 

ここでいよいよ気づいた。これは、おかしい。しかし既に時既に遅し、蟻地獄に引っかかったのと同じで、もう解約しようとクリックしたらまた課金されるという地獄にこのあと陥る。何もかも向こうの方が一枚ウワテだった。こちらの心理を完全に把握して、巧みにクリックさせる術で、そのサイトは作られていた。

 

例えばこうだ。さっきの「解約してください」のバナーにいって「こちら」をクリックする。「解約しますか」とあるので「進む」にクリックすると、それまでサクサク動いていたサイトが急に進みが悪くなり、お待ち下さい表示が現れてグルングルン回り始める。こちらはイライラしてきて、下にある「参照」というボタン、「参照」って意味がわからないけどひとまずクリックしてみる。

そしたらすかさず「プレミアムコースへのアップグレードありがとうございます。」という感謝のメールが届く。9ドルの請求がさらにある。

おそろしい。あのサイト、何かをクリックするたびにアップグレードの承認ボタンになっているのか。

その後、タイムラグがあって、「キャンセルされました」というメールがとどく、しかしそこには「今後は課金されませぬ」という英語。いや、このアップグレードのキャンセルをしたいんだけど、こっちは。

 

「え?父ちゃん詐欺にひっかかったん?」息子はむしろ関心を持ち出した。

「訴えたらいいやん」

といっても、相手はどこの誰かわからない。しかし自分の財産をもう握ってしまわれている。不気味だ。電話したら、さらにいろいろ情報吸い上げられそうだし、サイトにも怖くてこれ以上アクセスしたくないという心理になっている。白旗。

 

事情を知らない長女もいつもの調子で「ねぇパパ、歯を磨いたから一緒に寝よ」とのんきに話かけられる。「ごめんね、いまパパ大変なことになってるの。話かけないで」と心が痛いけど断る。おやすみの時間になった長女と次女は妻が寝かしつけることになった。貴重な時間を奪われていることに腹が立ってくる。

 

このサイトであれこれしててもダメだと諦め、カード会社に電話してとりあえずカードを止めてもらい、再発行してもらうことにする。もうスキミングされたのと同じだから、根本を断つしかない。直近の利用をみると、3クリックの3件分がしっかり請求かかっているそうだ。1$、2.95$、9.95&。あわせておよそ1,500円の損失。オペレーターお兄さんの声に「あなた、やられましたね。お気の毒に」が含まれておる。

ああ情けない。日々百円単位でいろいろ我慢してちまちま節約しているのに、一気にこの額が何のサービスの対価もうけていないのに奪われたことは実にくやしい。これが一桁違っていたら気が狂っていた。

カード会社に今朝、再度連絡して、この利用分は補償されるかと聞いたらお姉さまから丁重に「いたしかねます」と断られる。お客様ご自身で入力したんだし、が理由。この美しい声の女性に「あんた、いかがわしいサイトみてたんだろ」と思われてるのだろう。

「いえ、私は詐欺にひっかかりましたが、いかがわしいサイトではございませぬ、ただ息子のために」と言い訳したかったが、向こうもオトナなので「どんなサイトですか」は聞いてこなくてその機会は与えられなかった。

ちなみに名前をローマ字入力していないくても課金されるらしい。カード番号、セキュリティ番号、有効期限だけで照会がかかり、それがあっていれば課金される。うかうか登録なんてするもんじゃないなぁ。

それにしても、この金額は絶妙なのかもしれない。「まあいいか」と泣き寝入りであきらめられないくもない。こうやって小銭をあちこちの追い詰められたユーザーから巻き上げているのだろう。そして、あのリンクを貼ったブログにもアフィリエイト報酬がいっているのかとおもうと悔しい。

そして何よりもいろいろ時間が無駄になったほうが悔しい。カードを止めるし、定期支払をしている生命保険や携帯電話の会社に連絡しなきゃだし、こんな記事もかかなきゃだし、何より娘たちとの楽しい時間も奪われた。

おのれ悪質ネット事業者め。そうやって、ぼくはまたテレビとネットが嫌いになってゆく。そして、ぼくもさらに歳をとったらオレオレ詐欺予備軍なのだと気づく。息子にサッカー見せたいばかりに1,500円奪われるぼくは、息子が事故にあったと電話された日には、頭に血が登って数十万とか振り込んじゃうかもしれない。「まさか、自分が」とよくあちこち書いてあるけど、あれ、ほんとそうなのだな。

でもいいこともあった、朝、長女から「パパ、いまの心は何色?」と聞かれた。楽しいとピンク色、傷ついたら青色らしい。

「青色だよ」

「なんで?」 意外そうである。

「パパ、パソコンにお金とられちゃったの」

「パソコンに?」

「そう、パソコンの中にわるい人がいて、ウソつかれてとられちゃったの」

よくわからない表情を長女も次女もしている。そりゃそうだ。しかし、これ以上の詳細は話せば長くなる。

 

次女が「ママ、あのカバン、どこ?」と聞く。お気に入りの小さなポーチのことだろう。「あれ、保育園持っていけないよ。」と妻。

「いいから。」

そういって、ポーチをとりにいって、斜めにぶら下げながらぼくのそばにやってくる。「お金、とられちゃったんでしょ。だからあげるね」と財布からお金をくれようとする。な、なんと。3歳でもそういう気遣いができるのか。

「ありがとう。優しいね。でもパパ大丈夫だから、自分のほしいもの、買ったらいいよ。でもパパうれしくなったから、ハート、ピンク色になったよ。」といって二人を抱きしめた。

 

冷静に考えると、テレビ朝日のサイトにいったらネット中継をするなんてどこにも書いてなかった。まずはそこに行けばよかったのだし、カードの入力は慎重にという当たり前のことに気づく。授業料だと思ってあきらめる。アホなことをしたときは、言いふらしてネタにすることに尽きる。

風呂が先

夕日が沈む前に家に帰って、夕食の前に長女と次女をシャワーに入れる。風呂場に夕日が入るように窓をあけてよかった。とても気持ちがいい。二人ともご機嫌である。

しかも、夕食を食べたあとに歯を磨けば寝床にいける。21時に二人は寝ることができた。いいサイクルだな。

お株をうばう

長女と次女と一緒に寝床にいく。いつものように次女は「2冊本を読んでね」といって本棚から選ぼうとする。長女が「一冊はこれがいい」と『たべもの』という絵本を選ぶと「それ、いやだ」と次女が主張。「なんで、わたし選んじゃだめなの」と姉が泣きそうになるから、「先にお姉ちゃんにその『くだもの』読んであげる」というと今度は次女が泣き出す。

すると長女が「これ、わたし、自分で読むわ」と『くだもの』を読み始める。自分だけ先に本を読まれたら次女の悲しみが深まると察したのだろう。

次女も長女の音読に聞き入って、結局二人だけでもう一冊『ももんがのふゆのおうち』も読んでめでたく2冊を読み終えてしまった。

「パパやることなくなっちゃった。」というと笑い、「優しいお姉ちゃんでよかったね」と次女にいうと「やったー」と寝ながら両手を上げて喜んでいる。

ただそれだと長女が満足しないまま寝ることになりそうなので、「パパも読んであげようか?」と水をむけると「読んで」といって、同じ本を2冊読んであげた。

次は次女の誕生日

夕食の前、膝の上に乗っかってきた次女に「プレゼント何がいい?」と聞いたら、首をかしげて迷いはじめたから「ゆっくり考えな」というと、寝かしつけのときに「プレゼント、ドレスがいい。キラキラのね」と決めて寝た。

まだだった

久しぶりにそばで寝付こうとする息子にそろそろかな、と聞いた「好きな子できたか?」に「おらん。おれ、そういうの興味ない。つまらん」となんとも素っ気ない返事が返ってきた。学校でも聞かれるのか、少し辟易としている口調にも聞こえる。隠してるかんじもしない。小学校4年生のころは父ちゃんはいたけどな、別に好きになることはわるいことじゃないとか、自然にそのうちできるやろ、など。

昼休みはひとりで体育館でバスケのシュートをしていたらしい。友だちから話かけられ、「ひとりで遊んでるならボールを貸して」といわれて、「いやだ。練習してるから。」と断って、そのあと「んじゃ、取ってみな」となって遊びに発展。1対5くらいで囲まれたけど取られなかった。その後仲良しの友だちが味方に加わって、試合みたいになったけど勝ったよ、とのこと。楽しくやっているみたい。