はがきを出しに家をでようとしたら、長女が「わたしも行く」ということで、一緒にポストまでお散歩。ポストは歩いて15分くらいのところにあるから、手をつないでの往復30分のデートである。台風が近づいて来ているから、風が強い。
ぼくの右足のゴム草履の裏に1円玉ほどの穴があいている。それを見せると「捨てるの?ほかの子にあげるの?」と長女。
「捨てるよ」
「寂しいね。わたしは妹がいてよかった」
「捨てなくてすむから?」
「そう。妹が来てくれるしお別れじゃない」
道中、ミミズが干からびて死んでいるのをみつける。
「台風で雨が降ったら、ミミズが出てくるかもね」とぼくがいうと、長女の目がキラキラしはじめる。捕まえてメルにあげると喜ぶからだ。雨が降ったら、探しにこようねという話になる。
「台風って、どっちからくるの?」
西日本の方を指差して教えてあげる。
「あっちの方、大変なんだね」
「そう。雨が降ったり、風が吹いたり。」
心配そうにその方角をみている。
途中の公園で、風の強い中ウェディングドレスを着た花嫁と新郎が記念撮影をしていた。
「撮影できたんだね」と花嫁さんをシゲシゲとみている。
ポストについて、ハガキを出して家に戻る途中の横断歩道で、撮影を終えた花嫁さんた
ちと一緒になった。長女が小さな声で「おめでとう」と声をかける。
カメラマンが優しい笑顔で「あと20年後くらいですね」といわれ、ドキッとする。20年後は27歳。
「ここの結婚式場で結婚するのかな」とぼく。
「わからないよ」
「そうだよね。そのころ、どこに住んでるのかな」
手をつなぎながら「結婚式の日って、最初はパパと手をつないでるんだよ。そして、前まで歩いたら、結婚する人にバトンタッチするんだ」と説明する。想像しただけで、途中で泣きそうになる。
「え、ママじゃないの?」
ママがそのとき出てこないのが不思議のようだ。
「パパは、どこにいくの?」
さらには、「女の子と結婚したらどうなるの?」など。
誰と結婚するかより、そのヴァージンロードを歩くルールに興味を持ったようだ。
家につくまえ、風がより強くなってきた。
「ねえみて、こうしたら走るの早いよ」
追い風を受けて走ってみせてくれる。サンダルだから転びやすいから気をつけて、と思わず声をかける。
振り返って、こっちに向かってまた走ってくる。
「こっちむきだと、走るの遅くなるよ」
昼間、「パパって、仕事やめたら、ずっと家にいるの?」ととてもうれしそうだった。週の半分を育児制度をつかって今休んでいるわけだけど、これは次女が保育園の間だけの制度である。でも、小学校1年生の長女だって、まだまだパパと一緒にいるのがうれしいといってくれるし、ベタベタである。ほんとうは小学校の低学年くらいまでをこの制度、対象とするほうが親子ともども楽しめるのだろう。
実に幸せな散歩でった。