無双

サンタさんに長女がもらったハリガリというカードゲーム、単純にして複雑という典型的なすばらしいゲームだった。それぞれのカードにはフルーツの絵が1個から5個までのいずれかの個数が描いてある。フルーツの種類は4つ。はじめは均等に各々が手持ちのカードを持っていて、一枚ずつ場にだしていく。場にどんどんカードは溜まっていくうちに、いつか同じフルーツの個数が5になる。その瞬間、みんなで真ん中においてあるベルをチンと鳴らしにいく。最初にベルを鳴らした人が、その場に溜まったカードを全部もらう。手持ちのカードが空になった人から脱落。最後までカードを持っていた人が勝ち。老若男女でできて、人数多いほうが楽しくなる。

長女が保育園で鍛えてきた腕は、驚くほど巧みで強い。だれも勝てない。いままで兄にことごとく負かされてきたけど、これは圧倒している。ぼくら両親も本気でやっても歯が立たない。勝つたびに何ともいえない誇らしげな顔をする。

今日はいとこの実家にいって、そこでも独壇場でみんなから喝采を浴びてうれしそうにしている。「チャンピオン」と呼ぶことにした。

最後に息子が挑んで勝っていた。心配して見たチャンピオンの表情は真顔で淡々としている。

負けず嫌いの息子は繰り返し挑戦して、少しずつコツを掴んできているようだ。

帰りに寄ったスーパーで長女を抱っこしながら「負けていやだった?」と訊くと首を振る。

「ライバルいて、勝ったり負けたりしたほうが楽しいよ」

そんなことはわかっている、というかんじ。保育園にはまだ4人ほど勝てない友だちがいる。この子に勝つなんて、どんな素早さなんだろう。

ちなみに次女は全くカードがとれない。負けて悔しくて泣いていたから「最初から強い子なんていないんだ。何度負けてもいいんだ。強くなりたければ何度もやればいいんだよ」と昨日慰めておいたら、今日は負けても泣かずにぼくが言ったことをそのままいとこに伝えていた。前を向く限り、負けは負けじゃない。