四面楚歌

夕食のときの会話。

もしも長男が高校卒業して家を出るとする。

「そしたら、この家には中学生の娘が二人になるんだよ。大変だね、パパ。」と妻。

思春期で反抗期の年頃の女性が二人もいる。考えただけでもおそろしい。

「んじゃ、おれも出よ。」

長男に「おまえと一緒に住むわ」という。

すかさず妻。

「ぜったい、いややろ。18歳が、家を出たのに父ちゃんと住まなきゃいけないって。自分も絶対いややったでしょ。」

たしかに、絶対いやである。

息子は想像が追いつかず、他人事のように笑いながら会話を聞いている。

そうやって父親の肩身はどんどん狭くなっていくのか。

思春期の娘にとって父親は顔をみたくないというけど、かといってそれが理由で娘と別居したという話も聞かないな。世の年頃の娘さんを持つ父親たちは耐え難きを耐え、忍びがたきを忍び生活しているのだろうか。

 

「ま、いまこれだけ時間をかけてかわいがってるから、大丈夫やろ。」

だれからも返事はなかった。