男気

長女が夕食時、「ファンカーゴちゃん、どこかな」とまたボソっとつぶやいて、またもや、「もうファンカーゴに乗れない」と悲しくなってシクシク泣きはじめる。変なスイッチが心にできたみたいで、ふとした拍子にそのボタンが押されると、ファンカーゴを思い出し、そして感極まるようになってしまった。

わざわざ思い出さなくてもいいのに、と思うものの、「ファンカーゴ、喜んでるよ」と妻が慰めている。まるでもう天に召された人の扱いで、「お空から見ています」のいうノリだ。その慰め方でいいのかよくわからないが、他に何がいいのかもわからない。

息子が「じゃ、オレがまた買ってやる」と言い出した。妻が「あなたの持ち金じゃ足りないでしょ」といきなり現実路線のツッコミをいれる。

息子、「オレが将来お金持ちになったら」と反論。

そのお金でファンカーゴを買い戻して妹にあげるらしい。

「優しいお兄ちゃんで、よかったね」と妻。

息子は普段長女にはあまり優しい態度をとらないのだが、たまにはいいことをいうじゃないかと感心した。

お金持ちにならなくたっていい。万が一、お金持ちになったらファンカーゴではない車を両親にプレゼントしてほしい。お金はさておき、その妹思いの心意気は大事にしてほしい。