家族が一緒にいるというのは大事なことだが、11歳ともなると距離が必要のようだ。親の目が届かない時間も、彼には必要だし、ないと窒息する。こちらも、見えてれば構いたくたるし。大人と子どもが半分半分で登場してくるかんじである。ある時は機嫌が良く甘えるが、ある時は親に反発ばかりする。そういうの、自分もあったかな。親は黙って、見守るだけ、それがむずかしい。これが成長なのだろうか、もう親子の平穏な時間は、一日のうちでわずかしかなく、すぐに雲行きが怪しくなり、ヒリヒリ気を使う。中学から寮に入って育った友だちの話を思い出す。親なんて、もう彼にとって前面にいる存在ではあってほしくないのだ。背景に退くべきで。小さなころ、どれだけ可愛がり、蜜月な思い出をつくても、所詮は大きくなったら息子にとって父親など「クソ親父」にしかならないし、「こうはなりたくない」と思うものなのだ。
甘いものづくし
登山から帰って、2日ぶりに次女にあう。誕生日ケーキを食べれていなかったから、翌日は朝から近所のオシャレパフェ屋にいって、フルーツがたくさんのった豪華なパフェを食べる。3人の子どもはひとりひとつ。次女はいろいろな果物がのったもの、長女はメロンのもの、息子はコーヒーゼリーのもの。幸せそうである。
お昼は次女のリクエストどおりファミレスにいって、誕生日プレゼントのチーズケーキを頼む。店員さんから歌をうたってもらうあれ、をしてほしかったようだ。ぼくたち4人もタンバリンをもち、一緒に「ハッピーバースデー」を唄う。自然と顔がほころび、うれしそうである。
さらに夜は家でホールケーキ。電気を消してろうそくを5本灯して、吹き消す。暗い中で橙色の炎に照らされた次女の顔が浮かび上がる。おもいっきり息を吸って、口を膨らませて吹き消す。
息子もかわいいようで、近くにいって「おめでとう」を言ってあげている。
すこし離れ離れになっていたから、次女はくずりはしないものの、ママから離れない。
ポストまでデート
はがきを出しに家をでようとしたら、長女が「わたしも行く」ということで、一緒にポストまでお散歩。ポストは歩いて15分くらいのところにあるから、手をつないでの往復30分のデートである。台風が近づいて来ているから、風が強い。
ぼくの右足のゴム草履の裏に1円玉ほどの穴があいている。それを見せると「捨てるの?ほかの子にあげるの?」と長女。
「捨てるよ」
「寂しいね。わたしは妹がいてよかった」
「捨てなくてすむから?」
「そう。妹が来てくれるしお別れじゃない」
道中、ミミズが干からびて死んでいるのをみつける。
「台風で雨が降ったら、ミミズが出てくるかもね」とぼくがいうと、長女の目がキラキラしはじめる。捕まえてメルにあげると喜ぶからだ。雨が降ったら、探しにこようねという話になる。
「台風って、どっちからくるの?」
西日本の方を指差して教えてあげる。
「あっちの方、大変なんだね」
「そう。雨が降ったり、風が吹いたり。」
心配そうにその方角をみている。
途中の公園で、風の強い中ウェディングドレスを着た花嫁と新郎が記念撮影をしていた。
「撮影できたんだね」と花嫁さんをシゲシゲとみている。
ポストについて、ハガキを出して家に戻る途中の横断歩道で、撮影を終えた花嫁さんた
ちと一緒になった。長女が小さな声で「おめでとう」と声をかける。
カメラマンが優しい笑顔で「あと20年後くらいですね」といわれ、ドキッとする。20年後は27歳。
「ここの結婚式場で結婚するのかな」とぼく。
「わからないよ」
「そうだよね。そのころ、どこに住んでるのかな」
手をつなぎながら「結婚式の日って、最初はパパと手をつないでるんだよ。そして、前まで歩いたら、結婚する人にバトンタッチするんだ」と説明する。想像しただけで、途中で泣きそうになる。
「え、ママじゃないの?」
ママがそのとき出てこないのが不思議のようだ。
「パパは、どこにいくの?」
さらには、「女の子と結婚したらどうなるの?」など。
誰と結婚するかより、そのヴァージンロードを歩くルールに興味を持ったようだ。
家につくまえ、風がより強くなってきた。
「ねえみて、こうしたら走るの早いよ」
追い風を受けて走ってみせてくれる。サンダルだから転びやすいから気をつけて、と思わず声をかける。
振り返って、こっちに向かってまた走ってくる。
「こっちむきだと、走るの遅くなるよ」
昼間、「パパって、仕事やめたら、ずっと家にいるの?」ととてもうれしそうだった。週の半分を育児制度をつかって今休んでいるわけだけど、これは次女が保育園の間だけの制度である。でも、小学校1年生の長女だって、まだまだパパと一緒にいるのがうれしいといってくれるし、ベタベタである。ほんとうは小学校の低学年くらいまでをこの制度、対象とするほうが親子ともども楽しめるのだろう。
実に幸せな散歩でった。
次女5歳
次女5歳の誕生日。今日は次女中心に進めようと来てたけど、午前は長女を叱りつけ、夜は息子を叱りつけ。次女に申し訳ない、気分のいい一日ではなかった。
午前、長女を叱っているときに、次女が粘土で遊びたいと言いだし、「はなれにあるからとっておいで」というが「一人で行けない」というから「もうならいいわ」とつい突き放してしまった。すると息子が「いっしょにはなれ、いってあげる。今日誕生日やもんね」と優しくフォローしていた。
誕生日プレゼントは決めず、デパートのおもちゃ売り場で選びたいのだという。ずっとドラえもんの何かを狙っていたようだが、お化粧セットにしたらしい。ぼくはやることがあって同伴できず。
家に帰ってきて、みんなで次女が食べたいというピザを食べにパスタ屋へ行った。オムレツとピザをよく食べていた。この子の食欲は頼もしい。三人の子どもで大きくなったら誰が一番お金持ちになるかな、という話になり、次女がなりそうだと話がまとまる。そのあとカラオケに行く。パプリカやドラえもんの唄を一生懸命歌っていた。
明日から登山で、最後まで次女を連れていきたかったが、敢え無く断念。次女はおばあちゃんの家に泊まるから、夕焼けをバックにみんなで写真を撮ってから妻が車で送る。最後まで名残惜しそうに「バイバイ」と手を振っていた。ひとり家族と離れる切なさを感じつつ、仕方ないと受け入れている覚悟が表情から感じた。頼もしくも、余計にもっと一緒にいたいとおもった。登山、この日にしなくてもよかったな。
次女がいない家は静かで寂しい。保育園の先生にメルを預けたからなおさらである。
早く会いたいな。お預けのケーキのお祝いもしたいし。おめでとう。元気に大きくなってくれて、とても嬉しい。何度も「おめでとう」と「生まれて来てくれてありがとう」を繰り返し伝えた。