風船事件

よく家族でいくラーメン屋は帰りに風船をくれる。子どもたちはそれが楽しみらしい。1人ひとつもらえるのでケンカにもならない。

数日後、長女の風船だけ、しぼんでいて、悲しくなって泣く。別にそのくらいのことで、とおもうけど、彼女にしたら悔しいみたい。次女がお姉ちゃんのだけ、小さくなったねとまた煽ったり。

「大きくして」というので、固く結ばれている口をそーっと解いてまた空気を入れてやる。こっちをじっとみて、少しずつ大きくなるのをみてホッとしている様子。

 

次女くらいの大きさにはしてあげたいなと空気を入れると、うかつにもパンと割れてしまった。「あ」に濁点をつけた声が出てしまう。

静まりかえる我が家。

「われた!」と息子が声をあげる。

救世主にみえたパパが、急転直下で残酷な悪魔にみえたであろう長女の顔をおそるおそるみると、固まっている。

泣いちゃうなこれはと腹をくくりながら「われちゃったね、ごめん」というと、なんともいえないビックリと残念な顔をしたまま視線をはずし、ごはんを食べる。パパに悪気はないことをわかって現実を受け止めることができたのか、意外にも涙はなかった。ほっ。はじけた風船の残骸を拾いながら、成長を感じる。

 

次女の赤い風船は一週間たってもまだしぶとく大きさを保っている。