泣き止ます奥義

イヤイヤ期の子はもうヤカラよりヤカラ、台風より台風なわけですが、泣き止ます方法をかいた虎の巻のような、そんなのあるのかしら。むかしのひとたち、たとえば戦国時代とか、殿の息子がイヤイヤ時期で、泣かせた、とかの罪で罰せられた人とかいなかったのかしら。逆にあやすのがうまくて出世した人とか。良寛さんとかうまそう(偏見)。

 

昨日はゴムプールの片付けを妻がしてて、そのあいだに次女はプールに入ろうとして、びしょびしょになる。ちょっとあんたみててといわれたので、プールから引き剥がして抱っすると、もう真っ赤っかな顔で泣いて、顔思いっきりつねってくるし、あらゆるジタパタするわけです。社長だせ社長的な、「パパやだ、ママーママー」をひたすら連呼。こっちゃ絶賛発熱中夏バテ真っ盛り。もうね、無力さに途方にくれるしかなく。かわいい我が子だけど、このときばっかりはデコピンしたくなるくらい。ちょっと強めの。小指でいいから。(いや、実際はしてないですよ。一回も。念のため)。長女が昨日買ってもらったはじめてのリカちゃん人形を次女に貸してあげてもいいよ、といって渡してくれる。なんて優しいんでしょありがとう、ともらって見せるけど、まったく効き目なし。長女に気まずい。我が家はテレビがないから、映像系も手段としては使えないし、それに頼るのは小児科の待合室とか外のときだけでいい。

 

昨日は千葉から実父がきてて、長女と遊んでて、その様子をみかねたのか、泣いてる次女を呼び寄せて、あやそうとする。おいおいあんたそんなのできんでしょ、俺、一人っ子やし、経験もないでしょ。リカちゃん人形使ってあやそうとしてる。いやそれさっきやったし、効果なかったし。

実父、「リカちゃん、おねんねさせてあげようねーおやすみ、してあげようねー」という。なんじゃそりゃ。目開いとるわ。

腕には長女がどうなるかなーと見守っている。

「おねんね、しないねー、おねんねだよー、ほら、いってごらん」

なんということでしょう。激しく泣いてた次女が、泣き止んで、興味深々にリカちゃんをみてる。長女も、ケラケラ笑いだす。それをみて、次女も笑いだす。

ま、まけた、、完敗。ぐうの音もでない。しかも、人見知り期で一昨日あったばっかりの人に。ショック。寝込む。熱上がる。

 

心の余裕が違った。ぼくはいつしか、早く泣き止ますのを目的にしてた。対決姿勢に自然となってた。ザリガニを穴から引っ張り出そうとして、どんどん奥に潜らせたパターン。実父は、泣きやますためではなくて、興味を引くように、一緒に共通のテーマをみつけて誘った。北風と太陽ってやつか。

「年の功だよねー」。

二人の孫娘をそばによせながら、そういった。このハーレムジジイめ、いや偉大な父よ。あのギャン泣きで諦めず、果敢に挑んだところからしてすごい。消防士のようだ。

 

本日は、反省して心に余裕をテーマに太陽大作戦を敷こうと決めた。ママが、二人を連れて帰宅後、次女はキッチンでゴーヤを切るママの膝にしがみついて、抱っこ抱っこと泣いている。ママはみんなごはん食べられなくなるから、と対応できず。俺がゴーヤやろうかというものの、今日はいいです病人、とのことで、んじゃ風呂に先に入れましょうとなる。泣く次女をカブトムシを止まり木から剥がすように、妻の膝からはがしとり、泣いたまま力付くで服を脱がせる。先に長女が入ってる。状況としては昨日とそんなにかわらない。舞台はそろった。

 

余裕余裕と自分にいいきかせ、入ったあとを見守る。長女がお風呂に水ためてー、といい、空きペットボトルに水をいれて遊ぶ。あーちゃんも、と次女予想通り便乗。はいどうぞ、もうひとつあるペットボトルを渡す。大事そうにかかえこむ。洗面器で水をコポコポやる。そのペットボトルが今日のリカちゃんか、ということで、それを大事にしてやりながら、背中からそっと大腿部の上に仰向けで置く。いつもの身体洗う態勢。もっと遊びたかったと泣きそうになる。もう力付くでチャッチャと洗おうとする自分はいない。

目の前にあるその小さな顔に、こちらが泣いた顔をしてみた。とっても悲しい顔。しばらくして、ニカッと急に笑ってみせる。緊張と緩和。すると、じーっとみたあと、こっちが笑顔になったら、キャッと笑う。成功だ。興味を引いている。そして、子どもは同じことでも何回でも笑えるという素晴らしい才能をもっている。繰り返す。その隙に、身体を洗う。

不思議とめちゃ順調。そのあともごきげん。

 

実父がみせた昨日のは、奥義だったのかもしれない。そばにおねえちゃんがいるのも大きい。おねえちゃんが興味を示したり、笑っていると、自然とつられている。

泣いてるときこそ、それを悪いことと捉えすぎて、早く泣き止ませなきゃ、というプレッシャーが、余計事態を悪くしてる。

そんなときは、次女を泣き止ます、ではなく、そばの長女を笑わせる、と切り替えれば、気持ちは随分楽になる。楽しいところは、涙が消える。take it easyというやつか。明けない夜はない。泣き止まない赤子はいない。

 

大変な時期だけど、泣いてないときは、毎日言葉も覚えるし、あどけなさでみんなを笑わせるし、とてもかわいいわけで、しかも、パパは知ってるんだなぁ、このイヤイヤ期を抜けると、天使のようなかわいい3歳が待っていることを。ご褒美は、ちゃんとある。