入部祝

息子に入部祝でバレーボールを買ってあげた。

二人でスポーツ店にいく。最初は一番安い1,300円くらのもの一択のつもりだったが、いってみたら公式球が5,600円くらいであった。みるからに質が違う。それでも最初は一番安いものでいいだろうとぼくがいうと、高いものを買ってもらえるとは期待もしてなかったみたいで「はい」と息子も納得する。

ぼくの方が思いとどまり「この公式のやつほしい?」と尋ねると「そりゃね」と遠慮がちに言う。学校ではこの公式球だそうだ。この4,300円差はどうとらえるべきだろうと悩む。飲み会1回分で一番いい球になるなら安いものな気もする。

ぼくのバスケボールは一番安いわけではないが、中の下だ。それでも奮発したのだが、やはり一番高いやつを触ると違いが歴然としていて、ほしくなる。毎週触るわけで、このボールに愛着がないわけではないが、やはり憧れつづけている。

たまには息子が全く期待していない、いきなり一番いいものを与えてもいいのではないかという気持ちが芽生えはじめ、買ってあげることにした。「自分の金でかう?」と水をむけるが「えー」と抵抗。言っておきながら、自分のケチくささに嫌気がさす。

よくわからないが、ぼくの中で入部祝ということにした。経験者の同級生もいる中で厳しい競争もあるだろう。上達を激励の気持ちも込めて。

「ありがとうございます」

車の中で箱から出し、箱の説明書きをよむ。

「空気入れるときは空気入れの先に洗剤の原液かグリセリンを塗ってからさしてください、だって」

ビニールをそうっと外す。そのあとパンパンと幸せそうに習いたての手の動きでボールをいじりつづけている。物を大事にするのはこいつのいいところだ。

その足で塾に送る。車から降りるとき「じゃあな、またな」とボールに声をかけていた。

バスケに家族全員でついてくることになり、体育館の隅で妻とパス練習。

「このヒョロヒョロが三年後、すごくうまくなっているのかね」と妻。