息子いない夜

息子がスキーの合宿に行くので車で送る。2泊3日。

家で出発前に「おまえがおる間、どうしたらいいんだ」と尋ねる。

マッサージのことだ。

それが伝わったようで、代わりに「娘たちでなんとかして」と返ってくる。

荷造りも夜遅くまで自分ひとりでしていた。楽しみにしていることが伝わってくる。

幸い、また雪が降ってきて、雪質も良い中でできるだろう。

車中も特に会話がない。父としては息子がいなくなり寂しいが、それは結局口にしなかった。

合宿所について「まだ説明はじまるまで1時間もある」といいだす。

「レンタルの手続きもあるから、いったほうがいいやろ」

「そうやけど」

でも駐車した車に1時間いるのもムダな気がするので、車を先に降りて誘導する。とぼとぼ息子はついてくる。

合宿所の玄関で受付をして、お金を払う。親はそこまだ。ぼくがお金を払っている間に、ぼくの脇を抜けて中に入っていき、上階の集合部屋に息子は向かう。別れの挨拶もなくスタスタと。何度かこちらを振り返ったみたいだが、またすぐにもとに戻って歩いていった。自分のリュックと、普段ぼくがバスケにつかっている大きなショルダーバッグを下げて。

元気な娘たちはいるものの、家の中がどこかあっけなくて寂しいものだ。息子はどこ吹く風で楽しく満喫してくれていたらいいのだけど。夜は雪が降り、日中は降らない絶好のスキー日和だ。明日の晩、帰ってくるらしい。

来年はもう中学生だから、この合宿も最後だ。去年は雪がなくて中止。一昨年以来の2回目。近所の友だちが一人参加するが、それ以外は知らない子ばかり。その環境を楽しめるのだからちゃんと成長している。

でも、車で1時間一緒に話をしていればよかったと少し後悔している。