自転車の登降園

記憶でははじめてなのだが、梅雨の間の久々の晴れ間で、保育園に登園も降園も自転車に次女を乗せていった。登園のときに「パパ、もしも晴れだったり、くもりだったとしたら、自転車で来てね」とお願いされたことによる。

登園時はいろんな話をしてくれた。

「パパ、山菜ってしってる?」

自然体験教室で園長先生がたくさん教えてくれること。

「パパよりも、たくさん知ってるよね。おばあちゃん、天ぷらつくってくれるよね。」

「パパ、毛虫持てる?」

保育園の先生や友だちで持てること。 

「ちょっと暑いから、日陰にいって。」

崖側を歩いていたが、そこは日向しかない。反対側にいけば、各住宅の日陰がある。

「影って、なんでできるか、知ってる?」とぼく。

「うーん、太陽が当たらないから」

「そう。じゃ、この影、なんの影?」

「うーん、おうち」

「そうそう」

 

「この結婚するところ、ぜんぜん古くみえないね」

「ずっと前から、あるみたいよ」

「そうなんだ」

「おうちも、ぜんぜん古くみえないね」

「おうちは、古くないからね」

「そうなんだ。いつからあるの?」

「5年くらい」

「ふうん。じゃ、新しいね」

家が建ったのは、次女が生まれた次の年である。

「前に住んでた家、覚えてる?」

「おぼえてない。赤ちゃんだったからね」

「そうだよね」

 

今日はいつもの道ではなく、並木道から行きたいという。

「木の陰は、コカゲっていうんだよ」とぼく。

「そうなんだ」

たしかに今日は少し蒸し暑い。次女を乗せて自転車を手押しして坂をのぼると火照ってくる。

「パパ、暑い?」

次女はどうか聞くと「パパの影だから、あつくない」とのこと。

「宇宙、持ってみたい」

保育園につくころ、そういった。

「宇宙って、丸いんでしょ、こう手に乗せてみたい。」

壮大な視点だな。

 

ゴゴーっと飛行機が飛んでいく音がする。

「飛行機って、どれだけ高いところ飛んでるんだろ。2メートルくらい?」

空を見上げながら。

「2メートルはパパより少し高いくらいだよ。」

「ええー」

 

降園時の話したこと。

ヤギが新しく保育園に来たこと、並木道の葉っぱをちぎって、その香りが好きなこと。その香りを世界中に届けたいこと。でもその香り、ぼくが苦手だというとぼくを除くこと。

大きな階段の端に平な部分があって、そこを自転車で下ってみる。次女がぼくにつかまりながらシューッと滑る。4回繰り返す。

「おもしろい。」

ずいぶんショートカットもできた。

「新しい道、みつけたね」とぼく。

 

「明日、夏祭りだね」

「うん。楽しみ。このこども園でよかった。楽しいこといっぱい。」

「5年間も通ったんだよ。」

長女は3年、息子は1年。次女はこのこども園しかしらない。このこども園からたくさんのことを感じ、学び、めいっぱい、満喫した。きっと大きな人生の糧となると自信をもっていえるし、このこども園に通う環境をつくれたことは、ぼくがUターンしてできたことの最大の我が子への貢献だと思う。

そんな話をしながら道を渡ると道路の向かいの一台の車の中から手を振られたらしい。ぼくは気づかなかったが次女が教えてくれた。保育園の先生だったそうだ。

終始楽しそうで、ニコニコであった。こちらも幸せである。