夕焼けと一輪車

夕刻、メルを朝庭に放ちながら、長女の一輪車の練習に付き合う。長女の左前に立ち、バージンロードを歩く父のような腕の形にする。それに長女が左手でつかむ。一輪車を漕ぐ歩調に合わせて、ぼくも動く。動く手摺り。まさにバージンロードを歩くようなペースである。最初の頃は両手で支えてやっとであったが、だいぶバランスを掴めて来ているようだ。

ときどき、雑草の隙間の虫を夢中であさるメルが、我に返ってぼくたちを探す。ピーピー鳴いて少し離れたぼくたちを見つけると近づいてくる。ぼくたちもその声に反応してメルのもとにいく。

「今日、学校で初代メルにそっくりなの、本で見つけたよ。」

図書館にある生き物図鑑にいたらしい。

「今度、生き物について調べて発表するんだ」

「何について調べてるの?」

「メダカ。飼ってたから。」

メダカを食べたのも、そういえば初代メルであった。

その後、メルと散歩したいというので夕庭に移動。夕焼けが今日も実に綺麗であった。