読書めも〜『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

<ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ブレイディみかこ/新潮社/2019>

・実は、英国の中学校教育には「ドラマ(演劇)」というれっきとした教科がある。(中略)日常的な生活の中での言葉を使った自己表現能力、創造性、コミュニケーション力を高めるための教科なのである。

・他人に自分の感情を伝えられない子どもは、他人の感情を読み取ることもできない。他者がつらそうな顔をしていたり、嫌がって泣き始めても、それが彼らに痛みを与えている自分に対する「ストップ」のサインなのだとわからない。

・自分で誰かの靴を履いてみること、というのは英語の定型表現であり、他人の立場に立ってみるということだ。日本語にすればempathyは「共感」、「感情移入」または「自己移入」と訳されている言葉だが、確かに、誰かの靴を履いてみるというのはすこぶる適切な表現だ。

・つまり、シンパシーのほうはかわいそうな立場の人や問題を抱えた人、自分と似たような意見を持っている人に対して人間が抱く感情のことだから、自分で努力をしなくても自然に出て来る。だが、エンパシーは違う。自分と違う理念や信念を持つ人や、別にかわいそうだとは思えない立場の人々が何を考えているのだろうと想像する力のことだ。

・It takes a village.
英国の人々は子育てについてこんな言葉をよく使う。「子育てには一つの村が必要=子どもは村全体で育てるものだ」という意味だが、うちの息子を育てているのも親や学校の先生だけじゃない。こうやって周囲のいろいろな人々から彼は育てられてきたのである。