息子の根性

次女につづき、息子が胃腸炎にかかった。お腹も痛く、吐き気ももよおし、熱もあるようだ。にもかかわらず、日曜日の漢字検定の試験は行くといってきかなかった。別に義務でもないし、休むことを勧めたが「いやだ。いきたい」と。

まちなかの会場まで車で送る。車の間も、息子は助手席でリクライニングを倒して寝ていた。緊急時として妻を同伴させる。「気持ち悪くなったら、すぐにトイレにいけばいい」と口を酸っぱくしていう。もし会場で吐いたら大事だ。

息子と妻を降ろしたあと、長女と次女を図書館につれていく。久しぶりである。たくさん本を借りて、時間になったので再び息子の元へ車を走らせる。

会場脇の道に停車させて二人の帰りをしばらく待つ。しとしとと雨が降っている。やがて、あいあい傘で二人が前から姿をあらわす。顔に元気はない。

二人が車に乗る。どうだったか尋ねると、妻が関心して「無事乗り切ったみたいよ」と報告。息子もすぐ横になるが、試験自体の出来は満足だそうだ。

 

翌日の学校、行けるか怪しい。食事後、「なんか気持ち悪くなってきた」とそそくさとトイレに向かい、豪快に戻していた。「明日、休めばいい。無理するな」と背中をさすりながら促す。

「いやだ。行く」とこれも拒否。

「通信簿のあそこ、0を並べたい。」

あそことは「欠席」のところだ。皆勤賞を目指しているらしい。ぼくが0が並ぶのを褒めたことを気にしているのかもしれない。

父ちゃんもそういえば小学5年のとき、豪快に教室で吐いたことがあるというエピソードを披露する。いまでも覚えているということは、当時は相当な修羅場だったのだろう。必死にかけよってきた担任の先生の顔を覚えいる。クラスも騒然としていた。当たり前である。今では笑い話だが、息子に同じ轍は踏ませまい。

翌朝。お腹は痛いようだが、「行く」という決意は固い。

「父ちゃんみたいにならないように、早くトイレいけよ」

いざというときのために、ビニール袋をポケットに忍ばせておけとアドバイスするが、「いいわ」と拒否していた。

「大丈夫やろ。」

「給食のあとがやばいんだよ。気をつけろ」

「ほーい」

昨夜吐いたにもかかわらず、喉元過ぎたら全く緊張感がない。あとはなるようになるしかなかろう。

結果、下校時までは無事に乗り切ったようだ。義母が迎えにいって、病院に連れていってくれた。

夕食時、薬を飲むために、袋から出す。

「おれ、このタイプの薬、好きや」

カプセルの錠剤のことである。妹たちはシゲシゲと覗き込み、「これなんだ」と自分たちが飲む粉薬とは全く違うニュータイプに、興味津々のようす。

父の心配をよそに、結局今週学校は休まずに行ききった。普段みない根性を見た。