運転手

昨日は一日中、車を運転していた。長距離ドライブではない。ずっと子どもたちの送迎である。妻が仕事なので、3人を連れて回った。

まずは将棋に息子を落とす。1時間ほど時間があるので、図書館の娘たちを連れていく。図書館で絵本を2冊読んであげる。娘たちが選んだ「ヒロシマのピカ」と「こども会議」の二冊。長女のおでこが少し熱い。熱か。このあとトランポリンとサッカーなんだけどな。

長女に「つらい?」と都度つどきくが首を振って「大丈夫」という。でも口数は明らかに少なくて、いつもの快活さがない。

絵本を借りて、息子を将棋に迎えにいって、次はテニスに落とす。

テニスも1時間ほどあるので「何か食べたい」と次女もいうのでパンを買いに行く。駐車場につくといつもは「一緒に行く」という娘たち、今日は車の中で待つという。長女はフルーツサンド、次女はクリームが入った細長いやつをご所望。

残念ながらフルーツサンドはなかった。代わりにアンパンやクリームパンを選ぶ。車に戻る。次女には望んだものを渡せて彼女はご機嫌だが、長女には「フルーツサンドなかった」と報告。「あんぱん、食べる?」というが首を振る。「じゃ、クリーム入ったやつは?」と出すとうなずく。やはり元気がない。

パンを食べながら近くに建設中の友人の家を見に行く。もうほとんど外観ができていた。車から見ただけでも「大きい」と口を開けている。

ちょうど時間になったので、息子を迎えにいく。テニスの出席のスタンプが貯まって、コインゲームをやってうまい棒30本を当ててご機嫌だ。

その後家に一度戻って、長女を着替えさせて水筒を用意して、トランポリンの時間だ。一応熱を測ると37.4度。彼女にきくと「大丈夫」というので、連れていくことにする。息子はお留守番するという。

山の中の体育館は寒くて、ぼくのところにたびたび来て、ブランケットに包みながら抱きしめる。長女ともうひとりしかいない。コーチにみてもらう番がすぐ回ってくるが、ずっと飛ぶわけにもいかず、演技して休み、演技して休みの繰り返し。休みの間はぼくが包む。やはり口数は少ないが、コーチの言うことはちゃんと聞くし、ちゃんと飛んでいる。そして演技が終わるたびに水筒のお茶を飲む。車から持ってきた箱ティッシュを出して鼻をかむ。手が冷たいから握りしめてあっためてやる。「大丈夫?つらい?」と聞くが、首を振って、順番が来たらまた演技に戻っていく。

次女は元気で自由にやっている。飛びたいときは飛び、ぼくのところに来て膝を伸ばして脚を滑り台にしろといって滑り、隣でやっているお兄さんお姉さんの体操教室の様子をじっとみたりしている。

コーチは長女に初級の初級の連続技の規定演技をコーチは教えていて、「後ろからはじめて振り返ってコシコシやってカカエやって」と口で技の順番を説明している。言葉で伝わるのか。少なくともぼくはわからない。でも長女はわかるらしく、5,6個の連続技を難なくできるようになっていた。5個目のときにうつ伏せになるので、ぼくがマットを入れてやる役割。ちゃんとぼくができるか不安なのだろう、コーチが「はいいまです」と合図をしてくれる。どんどん上達して、先生のアドバイスの飲み込みも早いし、身体もちゃんとついていっているし、感心する。自分の子どもではないみたいだ。

1時間半の冬の体育館はじっとしていなきゃいけないぼくにも堪える、今日ばっかりは早く終わらないかなと思っていると、体育館の窓にきれいな西日が射し込んできた。隣の体操教室の筋肉ムキムキのお兄ちゃん、おそらく大学生だろう、走ってからのバック転やら宙返り、そこからの着地を見事にしている。テレビで見たことのあるやつだ。実際は足音や踏み台を蹴る音、着地の音とすごい音がするんだな。その横でお姉ちゃんが平均台の上でクルクル回っている。その様子を次女が真横のトランポリンの上で腹ばいになってじーっとみている。お姉ちゃんもやりづらいかもしれない。

トランポリンが終わって家に帰る。「トランポリン習いたい」と次女がリクエスト。今は横でポンポン飛んでいるだけ。それで十分ではなく、ちゃんとコーチに習いたくなったようだ。

「ママと相談するね」

「ちゃんと言っといてね」

 

やがて、上を向いて口をポカンと開けて長女は寝てしまった。いかにも力尽きた感じである。20分後にはサッカー教室が始まる。そのことを知っている次女は「サッカーいかんなんよ」と起こそうとするが、制止する。たぶん、やめたほうがいいだろう。夕焼けがやけに綺麗だ。遠くの方まで広がる鱗雲がしっかり受け止めている。一緒に愛でたくなって、「みてごらん」と促すと「ここから雨雲、あそこから青色、そして赤色」と次女。たしかにマーブルのように、夕焼けだけではなく、いろんな色が混ざっている。

しばらくして次女も寝た。あれだけ飛んだら大人だってヘトヘトだ。

家について寝た二人をそれぞれ抱えて車から降ろして寝床につれていく。妻も帰ってきている。妻が長女の体温を測ると38度を超えていた。サッカーはもちろん断念するが、やはり無理をさせてしまったのだ。妻から批難の言葉。

 

あとは任せてぼくはバスケに行く。また車を走らせる。今日一日のなかで唯一自分のための運転。

帰ってきたらまだ熱が下がってないようだった。かわいそうなことをした。長女の横で寝る。

朝になると熱が少し下がっていた。「昨日は無理させてごめんね」と謝る。「トランポリンのときも、本当は辛かったんでしょ」というとそこは依然首を振る。そのくらい、やりたかったんだな。インフルエンザじゃなきゃいいのだけど。早く治ってほしい。

トランポリンのコーチから「一日中、パパが面倒みてるの?」と感心される。金曜日は保育園の野菜売り場で白菜をみつけたので「今日鍋にしよ」とつぶやくと次女の担任が「パパがつくるんですか?」と褒めてくれた。育児家事をパパがやる。まだまだ珍しい存在なんだな。