日曜の温泉から

日曜日の夜、息子で二人で街の温泉に行った。フットサル用の内履きをかった帰り。いつものところではなく、いままで行ったことがないところ。道中、いろんな話ができた。

温泉につくと、息子はタダであった。「こんなに自動販売機あるのに、コーヒー牛乳がない」と驚いている。

風呂場では水風呂と露天を行き来していた。ほっておいたら若い兄ちゃんと話をして仲良くなり、サウナにまで一緒にいっていた。そういう人懐っこさがこの子にはある。

お風呂に入りながら、「博石館にまた行きたい」とリクエスト。「2月までなら、入場料タダだし」というぼくがいつも「金ない」というのを先回りして付け加える。

ぼくは先に風呂から出て仕方なくペットボトルのジョージアのカフェオレを飲む。風呂上がりはコーヒー牛乳という刷り込みはどこで覚えたんだろう。さわやかな清涼飲料水のほうが身体は求めていそうだけど、なぜかコーヒー牛乳でないとしっくりこない。

息子もすでに刷り込まれている。自動販売機でどうしようかウンウン悩んで、ぼくのカフェオレをみて別の会社、ポッカのカフェオレにしていた。

飲み干して温泉を出るとき「コーヒー牛乳もあったし、まあいいか」と息子。

「でもやっぱりコーヒー牛乳は瓶でないと」とぼく。

「そう、なんかわかる」

わかるのか。そのかんじ。ペットボトルじゃ、ダメなんだよな。

家に帰ってきて、ダイニングで寝る前に彼と妻とぼくで将来何になりたいか、話をする。帰りの車でもきいた。そのときは「うーん」と「わからない。スポーツ以外やろ。」と出てこなかった。ダイニングテーブルに博石館でもらった宝石たちを手にもってシゲシゲとみながら、幸せそうに「おれ、石好きやろ。こういう石に囲まれているの、いいなとおもう。別に自分のものじゃなくても、お店の店員さんとかで。お客さんと話をして。博石館のお兄ちゃんも、石の説明してて、いいなとおもった。」と話す。いつになく、優しい穏やかな口調である。

「自分のものじゃなくても」という控えめなところが、小さな頃のぼくとは確実にちがう。一人っ子のぼくは、好きなものは自分のものにしないと気がすまない。以前、駅前の宝石店に妻と行ったのが印象的だったようだ。その店主と仲良くなり、「お金持ちにみえる人が、買いに来てていろいろ話をしてた」のをみていいなとおもったようだ。

 

そういう好きなこと、興味があることは大事にしたらいいと申し上げた上で、「そのきれいな石が売られるまでに、目に見えないいろんなたくさんの仕事がある。石を発掘する人、運ぶ人、取引する人、研究する人などなど。目に見えるところだけではなくて、その世界の広がりを経験したらいいじゃないかな」と付け加える。ただ収集するだけなら、やがて飽きてしまいやすい気がしたから。

好きなこと、ひたむきになれることを見つけて、自分が社会でどう役に立ったら幸せかがわかって幸せになってくれることをぼくたち親は祈ってることを伝える。「父ちゃんは公務員になってしまって、そのあたり、失敗したからな」とつい口を滑らせる。

「父ちゃん『失敗した』っていうけど、自分からそう選んだんやろ」と返ってくる。押し付けがましくなるつもりではないが、「そうだね、子どもとの時間を優先させた。自分の仕事のことはどうでもよくなって、それで子どもたちの可能性が広がればいいと思ったんだな」というとこちらの目を見て「うん」とそれはわかっている、という表情。そのあと、これからのこの国の人口動態や経済成長の可能性、資本主義のルール、アメリカ企業の人の使い方など。どこまで伝わったかわからないが、真剣に聞いてくれる。

息子は石に囲まれていることに加え、生き物も好きだから、自然の中に職場がある方がいいということもわかってくる。都会は違う。

「そういえば、ナカタさんから『美唄で大理石の彫刻体験ががある』って聞いた。」

「まじで!」目が輝く。

いつかいってみたいものだ。

「ただ集めるより、作るとか、何か一歩踏み込んだ方が、より面白くなると思うぞ。」

きれいな石で、ものをつくる職人というのもいいのかもしれない。「おれ、こないだ鍛冶の体験面白かったし、興味がある」ともいってたし。

こないだコンビニでいろいろものをかったとき、店員さんがビニール袋に商品を詰め込んでいくのをみていた彼は「ビニール袋要りませんって、いったら?」とぼくに勧めてくる。

たくさんあるので、「とても手で持ちきれないじゃん」といってもまだ不満そうで「いいや、おれの分は自分でもっていく」とビニールには入れさせなかった。

この子にとって世界は人間のためだけではない。太陽光発電も勧めてくる。そういう視野をもっていることは健全だし、これからますます大事だと思う。

ゲームやプログラミングにも興味があるし、これからどうなるかわからないが、なんとなく、彼が自然の中で石と向き合う仕事をしている姿を具体的にイメージすることができ、面白かった。何になるにせよ、応援するし、父としては視野を広げて考えるようにしてあげたい。

日曜日の夜は温泉。クセになりそうだ。