ラーメンと本

息子と過ごす週末のテニス教室と図書館の帰り。図書館でいつものように息子は数十冊をカバンいっぱいに借りた。翌週が休館日とあるので、めいっぱい借りている。「2週間、もつかな。」

ランチを帰り道、どこで食べようか迷って、家の近所をグルグル逡巡したあげく、いつものラーメン屋に行くことにした。息子はラーメンが好きではないが、チャーハンと餃子があるのでOKを出した。

店の中に3冊の本をがさっと抱えて入る。すぐさま読み始める。おい「先にメニューを見ろ」とメニューを差し出すと「ラーメン、食べてみよっかな」と珍しくラーメンになびく。ぼくが残ったら食べるからと好きな塩ラーメンを注文させる。

メニューが決まったあとはひたすら本を読む。ぼくもつまらないから本を読む。本を読む二人。店員が珍しそうに視線を投げてくる。

ラーメンがきても息子は読んでいる。

「麺が伸びるから、早く食べろ。」

残って伸びた麺を食べたくはない。

そう急かせば一口食べるが、また本にいって手が止まる。歯がゆい。

挙げ句の果てに「おれ、塩ラーメン好きじゃないわ」という発言。

「父ちゃんは、塩しか食べんけどな。ここは一番塩がうまいとおもうけど。」

まったく乗ってこない。

「んじゃ、おれによこせ」

「いい、もうちょっと食べる」

きっと塩だけでは満足しないだろうから、しょうがなくミニチャーハンを頼んでやる。餃子もすぐにたいらげたのでお代わりしたいか聞くとうなずく。

結局、チャーハンと餃子のダブルと塩ラーメン少々を食べたことになる。大人と変わらない。

やはり食べながら本を読むのはおさまらない。良くない習慣だとおもいつつ、夢中だから許してしまう。

その集中ぶりをみながら、こいつもやがてくる、彼女とこうしてデートでお店に入るときを想像してみる。やっぱり、こうして彼女に構わず本を読んでるのだろうか。このぶっきらぼうな奴は、いかにも、やってそうだ。寛容で本好きの彼女であってくれ。

夕食時、このときの想像を家族のみんなのいる場でいったら、息子も吹き出していた。

「図書館の司書さんとか、いいんじゃない」と妻。いまの息子からはすごく想像できる。

そういえば、息子はいま図書委員で、貸出の手続きのバーコードを時々図書室でやっているそうだ。長女の友だちで図書室でたくさん本を借りている子がいて、家でその子は「もう200冊かりたんだって」とよく話題になる。

「そいつ、今日借りにきたぞ。『ああこいつか』って思ったわ」と息子が長女にいっていた。といっても、その本人には何も話しかけたりはしない。ぼくなら「妹から名前よく聞いてるよ」という一言くらいいそうなものだけど。ぶっきらぼうなのだ。