還暦

夕食時、「校長先生、今年赤いちゃんちゃんこだよ」と息子。今年度で定年退職される。

ちゃんちゃんこって、何?」と長女。

ぼくが説明に困っていると。「父ちゃんのいまきているやつの、帽子と袖と切ったやつ」と息子。当たらずとも、遠からず。

父ちゃんの大学の恩師は来年で還暦。「若いよね」と妻。そうなのである。ぼくが大学にいたときからあまり変わってない。

先日上野千鶴子さんが「日本の組織はオッサンのメンズクラブ」と看破した。ごもっともだとおもう。役所の若い人は会議ではしゃべる機会を与えられない。オッサンの繰り返される武勇伝をフンフン聴くだけだ。一方、ゼミはその逆。議論をして、若いアイデアを活かそうとすれば、聞き手も感性が衰えるわけにはいかない。前者は楽だけど、脳が怠ける状態が続く。日々のその差は歴然と現れてくるのだな。老いは心から来るのだ。

 

ぼくが還暦のとき、息子は31歳、長女は27歳、次女は25歳。信じがたい。孫がいてもおかしくない。ちゃんと健康に長生きできれば、自由な自分の時間が、待っている。やはり今は子どもに時間を捧げるのが正解なのだろう。そしてそのとき、感性が衰えていて、「今の若いもんは」とか「昔はこうで」とか、愚痴ったり、過去の自慢ばかりするジジイになっていたら、もったいないし、周りも楽しくない。その年令でも子どもたちが気軽に家にきて、もしいれば孫と遊びたい。フンフンと話をきいて、訊かれたら話すくらいのジジイになりたい。そのためにも、今から若い声に耳を傾ける、運動をする、よく眠る。それだ。