「わすれた」

天気がいい朝は自転車に次女を載せて、手押しで保育園まで行く。人力車である。昨日は出張だったから、夜話せなかった。

昨日は保育園で何をやったかきくと「わすれた」とハキハキした口調で返ってくる。

「外に出た?」

「出たよ。おやつ食べたら、外に出るから。雨の日以外。」

「誰と遊んだの?」

「わすれた」

あったことは、その日のうちに聞かないとダメらしい。

いつもと同じ道を行く。結婚式場の脇に生えている「竹とたけのこの間の樹」をいつも指差す。「おしゃれ。」

並木道の葉っぱが黄色や黄緑色や赤色になってきている。

車庫で鎖に繋がれたドーベルマン風の犬がいて、いつも吠えてくるのだけど今日は吠えない。

「警察を助ける犬に似てるね」

「そうだね」

「あの犬は、警察を助ける犬を助けてるんでしょ。パパが言ってた」

ぼく、そんなこと言ったっけ。

車道脇の横断歩道にでると、車が抜かしてゆく。その車に友だちが乗っていることをみつける。

保育園につくと、作ったマラカスを持ってきてくれた。化粧品の空きパックをテープで飾って、外でみつけたどんぐりとかを入れたものらしい。今日の別れ際はスムーズで、カバンのタオルなどをセットしたあと、教室の入口で待つぼくにギュっとしたあと、すっと教室に入っていき、おままごとで遊び始めた。