思い出のコーヒーカップ

友人家族とプールにいったときのこと。プールのあと、横にあるバイキングに乗ることになった。でも身長制限がある。次女が怪しい。そのことを事前に次女に伝えておいたものの、いざ測るところで、ほんの数センチだけ足りない。それはそれは真剣な眼差しで、次女はまっすぐ前をむいて、背伸びはせず顎はちゃんと引いて臨む。ちょっとくらい背伸びしてもいいくらいのノリだけど、根が真面目なのだね。いいことだ。

でも、結果は入れてもらえず。長女や友人家族の子は生き生きと乗り込む。ぼくは次女を列から外し、一緒に乗らないことにした。

しばらくして、がまんしていたのだろう次女の涙腺が決壊して大泣きしはじめた。切ない現実だがこればかりは仕方ない。

仕方なく、となりの実にゆるい汽車ぽっぽに乗ることにした。ゴーカートから楽しい絶叫が聞こえてくる。泣き止んだものの、次女の悲しみは癒えてない。

ゴーカート組は興奮しながら「もう一回乗る」と並ぶ。仕方なく、そのとなりのコーヒーカップに次女と乗る。「これ、さっき乗った」としぶる。たしかに、さっき乗ったばかりだ。

「でもパパと乗ったら、すごい回るよ」と煽って乗せる。煽った以上、思いっきりハンドルを回しまくる。次女はようやくそこて笑顔になるが、尋常じゃない回転にぼくが酔って吐きそうになる。いつもはまったく酔わない体質なので戸惑う。それでも、次女の悲しみが癒えるならとハンドルを回しつづける。

おかげで次女の機嫌は元に戻るが、死ぬほど気持ち悪かった。