初ビリヤード

友人一家とプールにいって、ホテルにお泊りした日のこと。ホテルにビリヤード台があった。やってみたい息子。でも1時間500円と書いてある。ぼくのせいですっかり貧乏根性が染み付いてしまった息子は「たっけ〜」と反応して、ぼくと一緒にすっきり諦める。

ぼくにもせっかくの小旅行、息子が喜ぶのであれば、そのくらい出してあげればいいのになとシブチンを後悔する気持ちがないわけでもない。

あとでフロントで聞いてみたところ、「1台1時間500円」であった。1人あたり1時間ではない。それなら貧乏なぼくでも「まぁいいか」という気持ちになる。

そのことを息子に伝えると「そうなん?!」と少し声色が明るくなった。ゲームセンターと比べても別に1時間500円ならいいではないか。

というわけで、翌日のチェックアウト後にやることになった。一連のこの貧乏家族のやりとりを聞いていた友人がいたたまれなくなったのだろう、太っ腹なことに全部払ってくれた。息子とともに大喜び。

息子は与えられた1時間、みっちりかみしめながら球をついていた。最初はキューの持ち方もわからず、まっすぐ球の真ん中を打つこともできず、随分たどたどいかったが、友人から指導されて少しずつ動きが改善され、ナインボールくらいはなんとかゲームとして成立するくらいにまでなった。ときどき球を入れることに成功して、両手を上げて足をバタバタさせて「イェーイ」と喜んでいる。

新しいことをなんでもやってみて、面白いと楽しむ才にこいつは長けている。幸せそうな顔をみて、やはりこういうときはケチるべきではないと反省する。

長女や次女や妻は待ちながら横にあるダーツをやって時間を潰している。天井の高い全面ガラスの窓際にダーツの台があるので、そこに朝日が降り注いで思いっきり直射日光があたる。眩しすぎるし、暑い。妻がブツブツいっているので、一緒にやることにした。勝負して負けた。

さすがにぜんぶおごってもらうのは情けないので、友人の奥さんがコーヒーを飲むというのでその分は出した。400円のカップ1杯の薄い味のコーヒーであった。ぼくも飲んだが、すぐ飲み干してしまった。ホテルを出たところにファミリーマートがあるのを知っていて、そこまで150円のラージを買いにいけばよかったと少し後悔したが、それも面倒であると思いこむことにした。