ラスト

今日はついに長女の登園、息子の学童が最後の日だ。長女とは歩いていきたかったけど、妻が送りたいというので任せた。ぼくは次女と二人で歩いて登園した。次女は「パパが寂しいでしょ」という気遣いでぼくと行くことに決めたようだ。

朝食のトーストを食べているときに、お姉ちゃんと「今日で最後。ヤダ」とやっぱり寂しい様子。

「家でいっぱい遊べばいいよ」

トーストの食パンは十字に切って出してある。なぜか4片のそれぞれの耳だけを全部最初に食べていた。

「パンの耳、大好きだもん。」

今まで何回も出していたけど、初めてしった。

「白いところは好きじゃないの?」

「好きだよ」

その後白いところも全部食べたし、さらにバナナもたいらげる。

先に息子が「ヤベッ」といいながら慌てて学童に向けて家を出ていく。

 

次女と二人で家を出発。いい天気だ。青空が広がり、海まできれいに見える。「時間がないからスタスタ行こうね」とお願いしたからか、玄関を出たら一生懸命走っていく。

「速いでしょ。」

歩いてでは追いつけないくらいになった。でも先は長いから歩いていいよと手をつないで歩いていくと、やっぱり道草。

「今日最後のせんせいに、あげるんだ」と道端のつくしやキレイな紅い落ち葉、たんぽぽ、名前は知らない紫色の花を摘んで手に抱えている。途中どんぐりもみつけて、持ちきれないから「パパ、拾って」とお願いされる。まだどんぐりも小さい。

3年前は100メートルも歩けば「抱っこ」といっていたのに、今朝は「もう道がわかるから、教えてあげるね。パパはついてきて」といい、先に進んでいく。階段で転んでも、泣かずにまた立ち上がる。ほとんど手がかからない。来週から、こうなるんだな。次女の成長を感じて、これでいいんだと思えた。新しい生活へと切り替えていいんだという気持ちになれた。清々しい春の陽気も、そのためにあるような気がする。

 

保育園についたら先に登園した長女が大きなホールでぼくを見つけて、ぼくのジャンパーの背中のミッキーを触りにくる。他の友だちも一緒になってやる。ホールにあけられたランダムなポツ窓は奥行きがあって、穴蔵のようになっている。2,3人が入って猫のように佇んでいる。気持ちいいだろうな。長女はマットの上で友だちと遊んでいた。唇の上が荒れていて痛いから、家から塗り薬をもってくるようにお願いされる。

「最後、思いっきり遊びます」と長女の担任の先生。卒園式のときのような別れの悲しさはなく、吹っ切れているような力強い言葉。

主任先生からも帰りしな玄関で「今日で最後、泣いちゃう」と元気に声をかけてくれる。考えたらぼくも泣けてしまうので「言わないで」と返事するのが精一杯だった。

長女自身はもう受け止めることができたようで、悲壮感はない。むしろ寂しがっているのは次女。お迎えは妻と二人で行くことになっている。