夕暮れ時。次女が補助輪つきの自転車をこぎながら。
「ねぇ、まちって、だれがつくったの?すごいね」
まちをつくってるのは一人でなくて、たくさんの人でと説明していたら、
「じゃ、空はだれがつくったの?」
「空は、ひとがつくったんじゃないね」
「空をつくったひとのほうが、まちをつくったひとよりすごいとおもう」
「そうだね」
香山先生の「空は大きな天井だ」という言葉を思い出す。
太陽が傾き、少しずつ橙色を帯び始めている。雲は薄い。抜けているようで、包まれている感じがある。そんなもの、人間にはつくれない。
約5ヶ月間のどんより分厚い雲が覆っていた天井が、いよいよ抜ける。いよいよ春だね。