夕食を作っているときに、キッチンのむこうのテーブルの長女と次女がすこしイザコザになっているから、ちょっかいを出す。
「見て、ここに階段ができたよ」
といってどんどん身体を潜らせていく。かるいパントマイム。
長女は当然見抜くのだけど、次女は信じる。「わたしも」とすかさずキッチンのところにきて床をみる。
「ないじゃないか」とさけぶ。
「魔法だから、消えちゃった」
不満そうにまたテーブルのところに戻る。長女も一応一緒に見に来るが、「まあそういうことね」というリアクション。
「ほら、また階段できたよ」といって「階段」をぼくは降り始める。
間髪入れずに次女が走って見に来る。
「おしい。消えちゃったわ」
「もう!」と地団駄を踏む。
その反応をみて「かわいいね〜」と妻と長女とぼくで笑う。
笑われるのがすきじゃない次女は、さらに不満げ。
少し知恵をつかって、テーブルには戻らず「ここで階段出して」とお願いされる。
「いたら、できないなぁ」
最後は察しがついていたのかわからないが、次女は素直に信じ、長女は見抜く。
たった2歳の差だけど、現実の世界と魔法の世界を行ったり来たりできるライセンスをまだ次女は持っているようだ。そして、当の本人はいたって真剣なので、現実の世界の住人から笑われるのも、意味がわからない。