初登園

初登園の日は、お迎えのときになると珍しく快晴になった。これは歩いていけとの思し召し。

なごり雪があるので、帰り道はいつもよりさらに時間がかかる。

落ちていたカルピスのペットボトルを拾い、底を雪に当てると五つのくぼみができる。

「ほら、サクラ」といって、たくさん押し付ける。「わたしがやる」と姉妹で取り合いになる。もう一つブラックの缶コーヒーを拾う。そっちを押し付けあう。そっちは模様が単純な丸なのでつまらない。

途中で次女が「おしっこ」。まだ先は長い。でも引き続きサクラを咲かせて進まない。ゴミ捨て場の棒で鉄棒したり、草むらに入ろうとしたり、吠えられた犬に「ワーン」と吠え返し続けたり。さらに道草はエスカレートする。心配すると「おしっこ、ひっこんだ」とかいう。どうなってんだ膀胱。

急いだほうがよかろとショートカットしようとしたら「歩道があれば歩道を歩きなさいとおまわりさんいってたよ」と口をすぼめる長女にたしなめられ、結局元の道に戻る。春から小学生で一人で歩くようになるから、例外を覚えさせて混乱させるのはよくないか。

そこからグダグダ20分くらいかけて家に着いたら次女は我慢の限界に急に気づいて「もれちゃう」と泣き始める。「だから言ったでしょ」と最後に父はフォークリフトになり両脇を抱える。はなれに駆け込んで、ギリギリ間に合う。はなれのトイレは土間なので靴を脱がなくてもいい。そうしておいてよかった。あと数秒遅れていたらアウトだった。

続いて長女が次女のあとにすかさずする。彼女も密かに我慢してたか。帰ってきたら二人とも靴はびしょびしょだった。そのまま放置したせいで、帰宅した妻から「ちゃんと新聞いれて乾かしとけ」と後ほど怒られることになる。

そのあとはなれのこたつで3人でまたグダグダする。図書館で借りた絵本を一気に六冊読んでやる。『赤ちゃんはどこからくるの?』が面白かったそうだ。ぼくは『ライオンのひみつ』が心に残る。

姉妹での降園もあと3ヶ月を切った。ほんとのサクラはまだこなくていい。待つことばかりで時間がかかるけど、なるべく歩きたい。老後はこの時間を懐かしみながら過ごすつもりなので。