読書メモ〜『ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘』

『ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘』(水木悦子、赤塚りえ子、手塚るみ子文藝春秋/2010)

 

タイトルをみてビビビっときた。水木しげる赤塚不二夫手塚治虫も娘たちが父を語る本。挿入されている赤塚不二夫の『レッツラゴン』も、最高だった。ぼくがよく結婚相手をどうしましょ、と聞かれたら「その人の友人も含めていいなと思わなきゃ、だめなんじゃないかな」というのと同じようなことを、赤塚先生もおっしゃっていたのには勇気づけられた。「男にもてない男はダメ」なのだ。娘に伝えなくちゃ。

みなさん、パパといる時間はうれしかったといってる。

思春期や反抗期になったら父と会話しなくなって、大人になってできるようになったらいなかったり。そのときは作品を通じて父と会話してる気になるとか。ぼくには漫画は書けないが、このブログは残してゆく。ゆくゆく娘たちも読んで、なにかを感じでくれるといいな。そのときも、会話はしてたいけどね。

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手塚「生前に何かのインタビューでこんなことを話していたんですね。『頭ごなしにこれをしちゃだめ、あれをしちゃだめと言うとそこで子供の気持ちは止まってしまう。とりあえず好きなように、子供が納得するまでやらせる。もし迷っていたら拾ってあげる。それが親の役目だ』って。それ読んで納得しましたね。だからわたし、こうなれたんだって。やっぱりね、母親はしつけに厳しいものですよ。ああしなさい、こうしなさいって言っちゃうんですよ。ただ、それをやっちゃうと、子供は自分で答えを見つけられなくなってしまう。その点父は、何をどうやっても結果は出るんだから、出た結果を受けとめて自分で変えていけばいい、そういう接し方をする人でしたね。いわゆる放任主義。」

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赤塚「なんかね、人の悪口っていう感じではないんだけど、でも、「男にもてない男はだめだ」って言ってました。「女友達がいっぱいいても、男友達のいないような男は絶対だめ」って。男に愛される男に・・・。

手塚「赤塚先生の口から出てくると不思議な気もするね。」

赤塚「でもきっと、うちのおやじは女の人よりも男の友情みたいなものを大切にしてたんですよね、そういうとこってあった。なんか、恋愛もしたようなんですけど、絶対、それよりも・・・」

手塚「あれだけ浮名を・・・。女性とのエピソードをもってらっしゃるのに、結果的に男の友達とか、仲間を大事にしていらっしゃる。」

赤塚「男といるほうが楽しい。女の人は好きなんだけど、でも男といるほうが好きだったし、男とお酒飲むほうが楽しくて。で、女の人にやきもちみたいなの焼かれるのが大嫌いで、だから・・・。そういうところは、女はだめだと思ってたみたい。やきもちとか。」

水木「縛られるのが嫌いっていうことなんですね。」

赤塚「そうそう」

手塚「赤塚先生にとっての女性は、お母さんなんだよね。」

赤塚「そうなんです。」

・・・・

ある日私は思い切って父に尋ねてみた。

「ねえ、お父ちゃんが描いている妖怪って、本当にいるの?なんで妖怪の漫画ばかり描いてるの?私、学校で言われるから嫌なんだけど・・・」

すると父は読んでいた本から顔を離し、私の方を向いて怒ることなく話し始めた。

「近頃の人間は目に見えるもんしか信じない傾向があるんだが、お父ちゃん、それは間違っとると思うんだ」

「なんで?」

「お父ちゃんも実はねえ、妖怪の存在を疑問に思っとった頃があったんだ。でも間もなく解明されたんだ。お父ちゃん、戦争でひとり生き残ったときに味方の陣地まで4日ほどかけて戻るときにね、夜だったかお父ちゃんが前に進もうと思っても前に進まなくなったんだ、急に。なんだかグニャっとしたコールタールみたいなもんがあってどけても進めないんだね(どうしても前に進めなからね)、仕方なく休んだ後にもう一度同じ所をみたら、もうそこには何もなかった。その時にはきっと疲れていたかからどうと思っとったんだが、気になって調べてみたら、それが”塗り壁”だとわかったんだ。お父ちゃんが描いとる妖怪はちゃんと日本に古くから伝わっとるものばかりだよ」

父は鼻の穴を膨らませながらさらに続けた。

「今、妖怪は存亡の危機にあるんだ。妖怪の話は学術的な文で書いてあるものも多くあるんだけれども、そんな難しい普通の人は読まんだろ。だからお父ちゃんは人々にわかりやすくしとる訳なんだよ。そういう事ができるのはお父ちゃんしかおらんのだよ。いわば妖怪から与えれたお父ちゃんの使命だ。わかったか」

そう話す父の目はメラメラしていた。そして私は翌日から堂々と学校に行ったのだ。

(中略)

「お父ちゃんね、電気が妖怪を消してしまったともっとるんだ!・・・」

と熱弁をふるいはじめた。どうやら、まだまだ妖怪と共に歩き続けるらしい。

「私も妖怪大好きになったよ。お父ちゃん!」

これからもずっと父の近くで、父を助けていきたいと思う。

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