保育園の夏祭り

保育園の夏祭りがあって、長女は浴衣、次女はジンベイを着ていく。保育園の先生が作ってくれた手作り団扇にそれぞれ名前と写真がはってある。その写真のはにかんだ表情、ぼくが普段撮るとしないもので、とてもいい。保育園の先生に心を許していることがわかる。

この日のために盆踊りを練習してきたようだ。その踊りを矢倉の上と、その回りに円になって踊っている。その円の回りに保護者がまた円をつくり、それぞれのわが子を撮影している。

矢倉に上がるのは年長だけで、長女は最後の曲で登って踊る。太陽が海に沈む頃で、夕焼けが見事である。星と、ちょうちんの明かりが存在感をましてくる。

長女の保育園の夏祭りは今年で最後。もう来年はOGとしての参加になる。この大好きな保育園での日々はまだ半年以上あるとはいえ、カウントダウンが始まっている。長女もそのことがわかっている。今年は先生たちとも一緒に写真を撮ってもらった。

夏祭りが終わって、残ることができる保護者は矢倉の解体や備品の後始末を手伝う。妻と息子と次女は帰ることにして、ぼくは残るというと長女は「わたしも残りたい」といって、せっせと手伝う。園長先生に言われて、ちょうちんを畳んだり、箱に戻したり。せっせせっせと

終わったのは20時過ぎであった。帰りはぼくの自転車に長女を乗せて、ぼくは横で歩きながらハンドルを押す。ぼくの背中に長女はつかまる。

「片付けのお手伝い、がんばったね」

「だって、最後だもん」

そうか。だから、最後までいたかったのか。

「先生たち、がんばってたね。お祭りってさ、踊ってるときは楽しいけど、こうやってたくさん準備したり、お片付けをしてるんだよね。準備や片付けを頑張っている分、踊るときは楽しいんだね。それがわかったら、もっとお祭りが楽しくなる。」

「ふーん」

自転車だと普段の階段は使えないから、回り道をして家まで20分くらいかかる。この道は真冬に雪が沢山つもって、階段が使えなくなったときに通った道でもある。

「この道、おぼえてる?」

「うん。あのおウチの前にいくと、犬が吠えて怖かった」

「ちゃんと鎖につながってるから、大丈夫だよ」

踊りが上手だったねとか、感傷にひたるには十分な時間であった。

家に近づくと、月に気づく。

「あれ、火星やよ。プレネタリウムでいってた。」

月の近くの、左下にある明るいやつがそうらしい。

ファンカーゴとおさらばしたとき、あんなに別れを惜しんだセンチメンタルな長女が、今夜は泣かなかった。次はお泊まり会に、運動会。限られた時間、この大好きな保育園の思い出を満喫させてあげたい。