呼吸税

息子が、このまま二酸化炭素の排出と温暖化の関係を知って、「そのうち、二酸化炭素を出すのにお金かかったりするようになるんじゃね」というから、排出権の話をして既にそうなっていると説明したら、「人間も呼吸するのにお金かかるようになるんじゃね」と帰ってきた。

「んなアホな」とおもったけど、いや、ものすごくリアリティあるんじゃないかと思い直す。昭和の時代の人に「飲み水はミネラルウォーターがコンビニで売られるようになる」と言っても、誰が信じただろう。スマホの通信量だって最近は量に応じて課金されているし。エネルギーを使う人ほど、課金されてもよい。ということで、生きるなら、課金されても仕方ない、そういわれる時代が来てもおかしくない気がしてくる。

鼻と口に小さなセンサーが埋め込まれて、各人の呼吸量が管理され、その重量に応じて税金が課される。『20世紀少年』に人間がみなガスマスクをつけている場面が思い浮かぶ。

いや、わざわざそこまでしなくても、体重と体脂肪率で「あなたはいくら」と決めればそれでいいのかもしれない。自動車税と同様。ますますハードルが低いように思えてくる。

そのとき政府はいうだろう「いま、地球はかつてない危機に瀕しており、人類の生存が脅かされております。この国難を、生きるみんなで公平に分かち合い、乗り切ろうではありませんか」。

そのとき野党は反対の声をあげましょうと煽るだろう。「地球の温暖化は人間のせいではなく、太陽の活動の変化によるもので、温室効果ガスの影響は微々たるものだ。じゃあ地球が氷河期に入ったら、国は金をくれるのか。」

結婚相手も、収入の多寡より排出量の少なさ、で選ばれるようになったり。

どれだけ深呼吸をしてもよい、ど田舎に「呼吸特区」ができて、それが過疎化を止める手段になったり。老後苦労しないようにと、小さなときから排出量を積み立てるメニューを保険会社がつくったり。

その人のエコ人間度を格付けする公益社団法人が生まれたり。

何かに制限をかければ、必ず一儲けできる利権がうまれるわけだし、結構経済界からも賛同を得られるかもしれない。

どんどん世の中は生きづらく、つまらなくなる。でも儲かるから仕方ない。そうでもしないと国の経済がもたない。どんどんそういう傾向が高まっていく気がして、恐ろしい。