長女6歳

昨日は待ちにまった長女の誕生日で、6歳になった。一昨日くらいから「おめでとう」は百回くらいいっていたが、改めて当日も何回もいう。自分の誕生日より子どもの誕生日の方がうれしいものだ。

夕食はピザが食べたいというのでピザを買ってきてみんなで食べた。プレゼントはCMをみて惚れたらしいディズニー・プリンセスのコテコテのパソコン。ちゃんとキーボードもマウスもあるが、画面がスマホくらいしかない。いろいろひらがなやアルファベットなどの学習アプリやらが入っている。3歳からの対象だから取り組みやすいみたい。右から長男も脇からちょっかいを出して「やらせて」とマウスを奪っている。左から次女もわからないなりに自分もしたいとワガママをいっている。長女は二人に譲りながら楽しむハメになってしまっている。ペースを乱され、我慢を強いられる。それでも文句を言わず、小さな画面に3人顔を寄せ合って、楽しそうにしているからほっとする。たまにわからないと長男が教えてあげている。

ケーキは週末にしようということで、妻がアイスを買って来た。昔からあるソフトクリームの形をしたいかにも子どもが好きなやつだ。アイスを食べているときの3人は静かだ。モクモクと食べて長男が「おいしかった」と幸せそうにつぶやいている。

長女にはすでにいろんなことで精神的に頼っている。次女にとって長女はお手本だし、次女を動かしたいときは先に長女に動いてもらって、次女を連れてってもらったり。

そのおもちゃのパソコンを立ち上げたときに「目が悪くなるから1時間たったら10分間休憩しようね」とメッセージが流れたらしい。「まだ1時間たってない?」と都度都度気にする。それに現れているように、長女はマジメだ。普段親が口にする何かしなさいとか、何をしてはいけませんとかいうルールを逐一覚えていて、それを守ろうとする。よく次女を、時には長男まで注意している。ときどき、親からみてもルールを気にしすぎて苦しくないか心配になる。9時を過ぎたら眠気がきて真っ先に寝るし、朝がきたら一番に起きる。体内時計は家族で一番しっかりしている。

たぶん、将来たとえばぼくが老いて入院したとする。そのとき、子どもたちを仕切るのは長女なのが今からでも想像がつく。自由にやっている兄を動かしたり、次女に指示したり。妻に連絡したり。

だから、長女が泣くと親も動揺するし、家族はソワソワする。例えば昨日、娘二人をお風呂に入れて一緒に上がったとき。もう9時を回っていたから眠たかったのかもしれない、イライラしはじめて、うなじのところに濡れた髪の毛がつくのがいやだと騒ぎだした。じゃぁ、その髪の毛をタオルで拭いてあげるといってうなじのところを拭くとそれが痛かったらしく髪を拭くのをいやがる。でも引き続きまたその髪はうなじにペッタリ貼り付いてしまってまた嫌がる。とっととこれは拭いたほうがいいと判断して髪の毛をタオルでワシャワシャ拭いて水気をとるが、それも気に食わなくて泣いてお風呂を出る。その泣き声を聞いた長男が「父ちゃん、誕生日なのに泣かした」と糾弾してくる。

こういうときは妻がフォローに入って落ち着く。

寝床に来たときも泣いていたけど、ぼくが謝ると落ち着いた。その後本を2冊読んでやる。一冊は図書館から借りてきた本でぼくが読んでみたかった『おおきなものがすきなおおさま』という本。予想通り絵も美しいし、面白かったのだけど、「チョコレートをいっぱい食べた」というくだりを読んだら長女が「虫歯になるよ」と口にする。次のページをめくったら「王様は虫歯になりました」と書いてあったから驚く。読んだことあったかきくと初めてなので、偶然らしい。いろいろ想像しながら本を楽しむようになったのだな。もう一冊は次女のための『2歳まるごと百科』で、長女には易しすぎて、途中でまぶたが落ちて寝た。それを見て、次女も追いかけて眠ろうとする。

二人の寝顔をみて、つくづくこの家の安定は長女に依るところが大きいと思う。ついこないだ生まれたばっかりなのにすでに真ん中の子だけあって要になっている。でもまだ6歳。頼られてばっかりでは荷が重かろう。しっかり甘えを受け止めてあげなくてはいけない。

こないだ自転車で公園にいって、後ろの立ち姿をみて、すっかり女性らしくなったことに気づく。昨秋に自転車は補助輪なしで初めて乗れるようになって、その日はひとりで大きな公園を一周行って無事に運転して帰ってきた。自転車を止めて、次女を後ろに乗せてあげたり、止まったまま漕いだところに、次女が後輪に木の枝を当ててタイヤを回してカタカタいうのを楽しむのにつきあったり。

こうして誕生日を一緒に過ごすのもあと10回あるだろうか。

今はべったりだけど、パパから離れていく。それは仕方ない。でもパパは一つだけ必殺技を持っている。大人になって寿司に連れてゆくというものだ。幸いお寿司は好きなようである。行きつけのお寿司屋さんを持っておいて、パパとなら気楽に行けるし美味しいし、といく気になってくれるはずだ。そう信じたい。お寿司がダメなら焼肉でもなんでもよい。逆に娘とお寿司にいけたら人生もう思い残すことはない気さえする。

明日は保育園で4月生まれを祝う誕生会らしい。みんなの前で将来の夢を訊かれるとさっき寝床で教えてくれた「キャビンアテンダント」と応えるらしい。「パパその飛行機乗りに行くね」というとすかさず次女が「自分のにも乗ってよ」と横から入ってくる。次女に何になりたいの?と訊くと「アイス屋さん」と返ってくる。とはいえ、将来の夢は週替りである。長女なら「何にでもなれるさ」と励ます。

惚れた女性の子どもだから当たり前かもしれないけど、もしぼくが年長で同じ組だったら長女のことを好きになっている気がする。それがうれしい。

誕生日おめでとう。