唐揚げバナナ戦争

長女と次女との朝食時。息子はすでに学校へ行き、妻も出勤した。次女が目の前にある昨晩の唐揚げを2個みつけて「食べたい」というので、「どうぞ」というと猿のように手で掴んで食べ始めた。長女はお腹が空いていなかったのか「ピアノ弾いていい?」といい、これまた「どうぞ」というと弾き始める。

長女が弾き終わったあと、「私も唐揚げ食べたい」とリクエスト。しかしもう2個とも次女のお腹の中。さすがに「最初に『食べたい』っていわないと、さすがにもうないよ」と諦めてもらおうとすると、それが気に食わなかったのかうつむいてめずらしくいじけている。普段なら物分りがいいはずなのに。かといって次女がわるいわけでもない。「次女優先」に感じると彼女は厳しい。

仕方がないから残りの1本のバナナを長女に差し出してバランスをとる。

すると次女が今度はすかさず「バナナ食べたい」といい、「1本しかないから、これはお姉ちゃんにあげようね」と説得するものの、懐柔されるわけもなく「バナナ食べたい」と泣き始める。困ったことになった。

唐揚げ戦争がバナナ戦争にまで発展してしまい困って、長女に「バナナ、一口だけあげてもいい?」とお願い。

長女は観念したらしい。バナナをまるごと次女に差し出す。すかさず次女は遠慮なくこれまた猿のようにバナナをひったくる。なっちゃんの唄には小さい子は半分しか食べられないとあったが、あれは嘘だ。

「全部、あげていいの?」と長女に確認したらうなずく。

いたたまれなくなり、長女を褒めながら抱きしめてあげて、

「それじゃ、今日はパパのお腹の上で寝ていいよ」と長女にお腹の上で寝てもいい権利をあげることにした。毎晩、次女がそこを占有していて、これまた長女ががまんしているので、今夜は変わってもらおう。

それをまた目ざとく聞いていた次女は自分が上がいい「パパの横、だいっきらいだもん」とこれまた大声で泣く。

いい加減にしろ、さすがにムカついて「唐揚げもバナナも奪われて、お姉ちゃんかわいそうでしょ」と諭すとさらに大きな声で泣く。でもこれは譲れない。

その一言が長女には大事なのだ。結果がどうであれ、全てが次女に優先権が与えられると長女は拗ねる。パパは長女を優先したいけど、次女はまだ小さいから残念ながら次女に渡ってしまう。これなら長女はまだ救われる。

そんなこんなでバタついた朝は次女はぼくの足に捕まって、なかなか保育園の教室に入らない。先生が引き剥がしてうまくあやしながらバイバイをする。長女もなかなか別れようとしない。

 

家に帰り、バナナの皮を捨てたり、食べ残しを処理したり、買い物しているとあっという間に保育園のお迎えの時間になる。

二人を車に乗せて家に帰る途中、「朝、唐揚げ食べられなかったでしょ、だから買っておいたよ」というと長女が喜ぶ。そして次女は「唐揚げ食べてごめんなさい。」と自ら謝罪の言葉を口にする。成長したもんだ。

夜寝るとき。二人を寝床に連れていくと、「今日は私がパパの上ね」と朝の約束のとおり、長女が乗ってくる。次女も受け入れる。その代わり、長女の上に次女が乗って三階建てになる。不安定になるので、次女も長女もぼくの腹の上から落ちる。それが面白いらしく、キャッキャといつまでも寝ない。ぼくのほうが眠たくなったので横になると、また横になった上に二人が乗っかって、また落ちて喜んでいる。布団も柔らかいから、飛び込むのが楽しいのだろう。

見かねた妻がやってきて、「ママの横で寝る人」と誘うとすぐさまママの横に二人ならんで急にぼくはお役御免になって暇になる。そして二人はすぐに寝つく。笑い声が急になくなったので少し物足りなさを感じながら、気がついたら夜明け前であった。