窓にドンッ

テラスに面するガラスを磨いて、ブラインドを開けた朝。朝ごはんをつくっていたらゴトンと音がして、テラスをみたら小さな野鳥が落ちていた。横向きに倒れ、身動きをしない。キツツキの仲間かな。ガラスがないとおもってスピードをつけて衝突、いたたまれない気持ちになる。きっと脳震盪を起こしているのだろう。

以前も同じようなことがあった。ベランダにひな鳥がいて、飛べなく佇んでいた。あの鳥も、こういうことだったのか、我が家が鳥にとって武器になっていたとは。かわいそうに。

長女と次女、妻と一緒に様子をかがっていると、数分したらムクっと身体を起き上がらせて、二本の足で立つ普通の鳥の姿勢になった。死んではいなかったので安堵するものの、またその姿勢のまま動かない。首をキョロキョロさせるのが鳥らしいのに、それもない。辛うじて瞬きはしている。まだボーッとしているのがわかる。

長女は「ピーちゃん」と名付けて近くでよびかけている。次女は遠くから眺めている。

そうだと閃いたのか、お風呂にあるピンクの小鳥の笛、水をいれて吹いたら鳥の泣き声のような音を出すやつを持ってきて、ピーピーと奏でる。実の鳥にむけた虚の鳥の声。

首を少し動かしはしたものの、実の鳥からしたらニセモノはニセモノだったのかリアクションは薄い。そばに置かれた鳥型の笛と野鳥。いずれも動かない。心配そうに長女は優しくナデナデさすっている。

 

小さな足がテラスの床の木材と木材のすき間に入って立ちづらそうなので、皿をもってきて掴んでいれてやる。触っても抵抗せず大人しい、まだココハドコ、ワタシハダレな表情。

ちょうどサンドイッチを作ったので、パンの耳の切れ端があったからあげてみる。が、ピーちゃんは人間から与えられたものは食べない、と前回の小鳥を持っていった獣医さんがいっていたように、やはり見向きもしない。その前に存在に気づかない。

水は飲むかも、ということで水を入れた器を皿に入れてやる。やはり気づかないので、水がある向きに顔を向けてやろうと掴んだ瞬間、ピーちゃんはバババっと羽ばたいて外に飛んでいった。

力強く飛んでいった姿をみて、みんなでよかったね、といいつつ、突然の別れに一抹の寂しさが残る。鶴の恩返し、あれは作り話なんだな。現実は無力なり。朝からごめんね、ピーちゃん。