息子の誕生日 その2

息子が生まれたのは22時55分。その日は息子も夜更かしして、その時刻を目指して起きていた。長女と次女は寝た。

その時刻になるのを10分くらい前からそわそわしている。妻は洗濯物を片付けている。妻の携帯電話でその時刻になったのを確認すると、息子は妻に抱きついた。

続いて、ぼくも息子を抱っこしてみる。生まれた日もそうしたように。

当たり前だけど、腕からはみ出して安定しない。ずっしり。体重は10倍弱になっているから無理もない。この少年から当時の赤ちゃんのときの面影を思い出す手がかりはもはやない。喋る。ニヤけると、上の前歯が二本ない。9年の重み。

一つの生命がここまで育った。命がつながっている実感がうれしい。まだ死ぬつもりはないけど、親になって、自分の命より大事なものができた。たとえぼくが死んだって、この子たちが育てば、死も怖くない気がする。子どもたちは、元気に生きているだけで親孝行なのだ。

一緒にいられる間は限られている。その間に、父ちゃんがこれまで得たもの、もっているものはすべてあげたい。取捨選択は自由にすればいい。

親にしてくれた喜びをかみしめた夜。