喉の音

夕食時、ご飯を食べているとぼくの椅子の背中の後ろに入り込む長女。後ろからぼくの首のつけ根に耳をあてる。「食べて」と「まって、まだ食べないで」を繰り返す。食べ物を口に運んで、噛んで飲み込む一連の音を聴くのが興味深いらしい。お腹が減っていて次々食べたいときはペースが乱されて、じつは結構うっとうしい。とはいえ、世界広しといえども、ここまで自分の喉周辺に興味をもってくれるのは長女くらいなので、ありがたいことだとなるべく受け入れる。

やがて、次女も真似をしたくて椅子に昇ろうとするけど、二人分のスペースはないのでスペースを取り合いになって、もめる。ぼくの喉周辺のために、姉妹がケンカはしてほしくない。

それにしてもこんなものにも興味を示すなんて。お腹にいた頃って、心臓の鼓動音だけでなく、こういう音も聴こえているのかな。

ビールを飲むと、「パパ、ビール好きだね〜」というので、「大きくなったら飲もうね」と返すと、横から長男が「大きくなったら、父ちゃんに飲み込まれるんだって」と横やりをいれてくる。「ほんとに?」と少し不安そうになって、「うそやろ」と長女。

あと15年ある。その日を待ち焦がれている自分がいる。15年も待ち続けるのかと思うと気が遠くなるけど、今から飲みながら何を話そうか楽しみでならない。