パスポートと似顔絵

期限がきれたので、パスポートを申請にいった。前の写真は10年前のもの。無表情な白黒写真。まだ20代の前半で、結婚もしてなく、父になる前の顔。たしか、このときは無職だった。悩みや葛藤があったのだろう、それでいていまよりハングリー。その表情から出ている。

夕食の支度をしていると、テーブルの上においてあった長女がその古いパスポートに関心を示した。空いてるところに、シールを貼りたい、といってる。

昔のパパがいる~といって写真をシゲシゲ。「若いね~」といっている。年をとってない小さい子でも、若いとか、わかるんだな。
今の顔と違うかきいたら、「うん、ちがう」といって、人差し指で、「前はこう」とグルっと腕で大きな円を書く。丸い輪郭かな。たしかに、10年前のほうが太っている。ちょっと、絵をかいてみて、というとノートをもってきて、ペンでサラサラと書き始めた。10年前のぼくと、いまのぼくの2つ。どちらもメガネをかけているところは同じ。アゴのラインと髪型、ヒゲの有無が違いらしい。10年前もヒゲは生やしてないけど、白黒写真だからそう見えたみたい。

4歳のもつべき絵画力ってどんな程度かわからないけど、広いおでこ、メガネ、ちゃんと特徴がとらえられている気がして、描かれた本人はすこぶる気に入った。その線には、躊躇がなくて、実に潔よい。どう思われたいとか、上手く描こうとかがない。ただ、描いた。その感じがすきだ。そういえば彼女、保育園の習字で「し」という一字を書いて入賞してたっけ。あの「し」もシンプルだけど力強くてよかったな。半紙の隅をうなぎが寝そべったような。メインの中央は余白。聞けば、反対から書いたらしい。だから、普通は最後の払う部分にグッと点がある。

ぼくの描かれた緊張感のないゆるい表情。こういうふうに見えているんだな。
10年前も、今も写真の顔は無愛想だけど、この似顔絵はどちらも口角が上がって笑っている。彼女なりのアレンジか、口といえばこう描くことしかしらないからか。いずれにせよ自分の顔って嫌いなのだけど、この絵ならな

んかいいなと思える。

どちらのパパが好き?と聞いたら、満点の答えが帰ってきた。永久保存しよ、これ。

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