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アニバーサリー小旅行

結婚10周年のアニバーサリーなので、家族で旅行。ふんぱつ。交通費にお金かけるより、宿泊にお金かけようと今回は近場を選択。東京に住んでいたとき、帰省時に何度か泊まったリゾートホテルにいく。普段はスーパーで数百円単位で節約している日々、お財布事情が気になる身としては心臓にわるい施設だ。けど、この数日間は値段をみないで目をつむって楽しむようになるべく、したつもり。

 

そのまえに動物園に立ち寄る。クマ、キリン、オオカミ、トラ、ペンギンなどなど。モルモットにも触れる。白いうさぎだとおもったら、モルモットっていうらしい。モルモットっていう動物っているんだな。長女と長男はもちろん、次女も指を刺し、声を出し楽しめるようになっている。3人でモルモットとりあい。クマは真っ黒のやつ。体調1.5メートルくらい。最近家の間近でも目撃情報やら人身事故のメールがまわってくるから、リアル。こんなの出くわしたらエライコッチャ。でも長女は「くまさん、かおだけみたらかわい〜」だそうだ。なんだかんだ、一番人気はレッサーパンダだった気がする。

 

ホテルにつく。もうすでに日は沈みかかって、ロビーは小さな灯火でムーディー。ロビーをみて、長男は以前泊まったのを思い出したらしい。長女はまだ歩けないころだったから記憶なし。いまではソファーに座り、その女の子然とした姿。大きくなったなぁ。普段と違う雰囲気を感じとって、しおらしくしてる。長男は何のその、ドラゴンボールの単行本を照度がない中で読もうと必死。ロビーで出るウェルカムドリンクに読みながら手をのばすものだから、案の定こぼして叱られる。

 

部屋にチェックインしてすぐに食事。フレンチ。個室で安心。とはいえ、お店の雰囲気はいつものCOCO'Sと違うので、長女のおすましっぷりは持続。口数が少なく、背筋を伸ばし、きちんと姿勢をただし、椅子にじっとすわっている。一気に料理は出てこない。待ち時間もある。普段は歌ったりおしゃべりしたりムードメーカーなのに、今日はじっとこらえて座っている。料理が出てきたら、大事そうに、ひとつひとつお箸で食べていく。4歳でもTPOがわかるんだな。将来大きくなって、いつか誰かに連れてってもらうときも、こういうかんじになるのかなと想像できてしみじみ。一方の長男はCOCO'Sとかわらない。暇になると箸置きをおはじきにしたり、じっとしてることがない。ドラゴンボールは我慢して部屋においてきたけど、その禁断症状か。落ち着きのなさは6歳下の次女とほとんど変わらない。普段はお兄ちゃん大好きなのに、「かっこわる〜い」と長女がポロッと口にする。とはいえ、普段こんなところに連れてきてないし、マナ〜のマの字も教えたことはないから、田舎坊主の長男ができないのは仕方ない。むしろ空気読んでじっとしてる長女の女子力にビビる。

ドリンクは何になさいますか、のくだりがやってくる。価格は見ないと決めてたつもりだけど、シャンパンもワインも一桁いつもとちがうから、さすがに躊躇。妻がぼくの親中察して余りあったのか、比較的安い「日本酒で今日はいいか」と促してくれるので甘える。日本酒、普段飲まないのにそれができるのだから、できた嫁だ。

立山牛のステーキがメインで、子どもたちにも出てくる。いつもは牛肉は買わないから、もうそれはそれは美味しそうに食べておる。付け合せのフライドポテトからしてぜんぜん違う。よっぽどおいしかったのだろう、次女がどんどん口に運ぶ。こんな機会めったにないから肉を食えといってもフライドポテト食べてる。

 

子どものメインがおわって、これから大人二人のメイン、これもおなじ立山牛になるころ、お腹も満たされ、疲れもではじめたのか、長女もワサワサ落ち着かなくなってきて、いつもの元気なテンションになってきて、おしゃべりしはじめる。開始から2時間たっているから、そんなもんなんだろう。暇を持て余しはじめて、長男とジャンケンポイポイどっち隠す、をやり始めて、声が大きくなる。早く帰りたいという衝動が身体から出ておる。よくここまでがんばったね、でももう少し待ってねとどうにか気をまぎらわせる。トイレに連れて行ったり。トイレの洗面には小さなタオルが並んでいて、それを使ったあと、どうしたらいいか戸惑う。足元のアルミのゴミ箱をみると、そのなかに使用済みがたくさんあって、ここにいれるんですか、うわぁ、これゴミ箱じゃないんですね、と子どもも驚いたようす。スイーツが来たから子どもたちと分けて、なんとかフルコース終了。お皿を割らずに乗り切ってほっとする。

部屋に戻って長男と大浴場に行くことに。準備しろ〜行くぞ〜と何度催促してもドラゴンボールを読みはじめているので、いい加減おいていこうとすると「オレも行く」と泣く。大浴場でも洗面器にお湯を汲んで、ブワーっとガラスやら露天風呂の外にかけて、カメハメ波!とやっている。これがやりたかったのか。ジャグジーで底から出るバブルと側面からでるジェットの2つのボタンがあって、どっちがどっちだと延々と押し続けて確かめている。風呂をでると大きなふっくらバスタオルが並んでおる。使ったら下の箱にほうりこむ。なんて贅沢なんだ。

 

部屋にもどって、友人から送ってもらったメロンを食べる。これももうそれはそれは美味しくて、子どもたちバカ食い。いつになく長女も次女も夜更かし。長男は最後の力尽きるまでドラゴンボール。もう読破は近い。普段はネットが通信制限あるから試せないAmazon Primeをやってみる。ツタヤいらずですねもうこれ。

長女はトイレでトイレットペーパーがフカフカだと感心している。父ちゃんはそれに気付いたあなたにビビるわ。たしかにダブルのソフトだ。我が家はシングルで最安のほぼ新聞紙だからな。妻にいうと、家によってはお客さんがくるときだけ、トイレットペーパーをいいものにする家もあるらしい。まじか。一巻き記念に持って帰ろうか、と妻にいうと引いていた。そういえば、大浴場の洗面にあった綿棒もフカフカだったな。カミソリは切れ味良すぎてアゴを切って血が出た。

水が飲みたい。冷蔵庫を開ける。それはそれは高そうなお酒が並ぶ。たしかミネラルウォーターはタダだといってたな、どれどれと小瓶に手を伸ばす。ラベルもホテルオリジナルらしく、きれいなグラフィックな風景写真だけで、なにも書いていない。ジリジリジリっとキャップを開けてるときに、背面のラベルに目がいって、恐ろしいことに気づく。「清酒」って、書いてある。これ、ミネラルウォーターじゃない!つまり、有料だ。キャップは辛うじて最後のパリっという部分が残っている。首の皮一枚でまだ開いていない。

妻に報告。バカじゃないの、ミネラルウォーターはペットボトルであるじゃない、とのこと。目を凝らすと、ほんとだ。でも、これもオリジナルのパッケージで、同じグラフィックな風景写真で、水とは気づかないよというくらいの小さなフォントでしか書いてない。オシャレすぎてパット見はわからんよ。

清酒は小瓶にもかかわらず980円。急に普段の金銭感覚が蘇り、とても買えませんぜ、になる。落ち込む。なにより、もう日本酒はいらない。妻の配慮もあり、さんざん夕食時に奮発してもう飲んだし。謝ったら許してもらえるのかな、まだ口はつけてないし。でも、ここまで開いたら他のお客さんには出せないか。自分のうかつさに腹立つ。ひとまず、明日の朝まで放置することにした。

 

朝になる。部屋の窓の先は数百メートル川幅がある川で、今朝は天気もよく流れもゆっくり。対岸の山肌を映した静かな川面にみとれる。角部屋なのでもう一面にも正方形の窓があり、その先は竹やぶ。やさしい光が入ってきて、土壁に陰影ができる。ミレーの絵のように、光が濃い。

和食の朝食。これまた何品もあって、梅だの明太子だのしぐれ煮だの、ご飯のおともがいっぱい。これでもかというくらいおかわり自由の土鍋のご飯がでて、食べきれないくらい。米が進む。長女は疲れが出てきたのか、慣れない雰囲気に落ち着かないのか食が進まない。かわりに食べてやる。2週間後マラソンだけど大丈夫かオレ。長男はいいのか悪いのか、空気に飲まれずいつもどおり。ドラゴンボールうんぬんの話。孫悟空やったらどれだけ食べられるかについて。天下一武道会おわったあとやね、それ。

朝、まだ踏ん切りがつかないでいると、「もう清酒、買っちゃいなよ」とここでも妻が促してくれるので、そうすることにする。急に胸が軽くなる。その清酒はまだ我が家の冷蔵庫。もったいなくて手がつけられていない。

 

ずいぶん背伸びした一泊二日。割り切って悠々とすればもっと楽しめただろうに、主夫感覚が板についてきたのだろう、ソワソワ落ち着ききれなかった自分がいる。この浮かれた日々でも、あ、明日はスーパーがポイント5倍になる日だと思い出したり、ガソリンスタンドで妻が取り忘れて、リマインドしてねと言われていたお釣りのレシートを取りに戻るぞと指摘できるようになったくらいだから。

帰り道。むかしよく出張時に行ったお寿司屋さんに顔を出すけど以前ほどの注文はせず控えめに。ぼくはイクラが食べられればそれで十分。妻は特上にぎりがいいというのでどうぞどうぞ。ぼくがかつて全国を出張しておいしいものを食べていたとき、妻はひとつも食べてないわけで、これからはこういうときはこういうバランスで食べればよい。

帰宅。長男は学校を休んだので、学校にいって明日の宿題を先生に教えてもらう。そのあと公文に送っていく。その足で明日は長女の親子バス遠足なので、弁当の食材を買いにいく。両親での参加は我が家だけらしい。母に任せて父はお仕事が大勢のようだ。どんなに肩身狭かろうと、めげずにわたくしは行きますぜ。

 

よっぽど疲れたのだろう、長女と次女は夕食も食べずに就寝。長男を公文まで迎えにいく。先生がうれしそうに、今日テストをして、次のステップに進めることになったと報告。「いつもはまったく集中しないのに、テストになったら急に字もきれいで集中するんですよ」と褒めてもらってるのか、たしなめられてるのかわからない。長男のほうをみると、絵に書いたようなテヘヘ顔。父ちゃんもどちらからというと、そういうのんびりタイプだから、気持ちわかりますぜ。

家に戻って、妻に伝えて、褒められると素直に喜んで上機嫌。8歳はまだわかりやすい。娘二人が寝ているので、ここ最近記憶にないくらい久しぶりに妻と長男3人だけで食事。ずいぶん静かで、そして手がかからない。ゆっくりこっちも食事ができてしまう。食べさせてあげる必要もなく、おかわりも自分でいってくれる。実に楽だ。じっくり話せる。でも、どこかスカスカしていて、賑やかさにはかけて、手持ち無沙汰なかんじが寂しくもある。

 

10年単位でみると、結婚20周年のとき、この長男は18歳になっている。高校3年生。今回は学校を休んででも、一緒に行きたいといった。「18歳になっても、一緒に行くぞ」とぼくと妻が念を押すと、何の疑問もなく「うん」という。言質はとった。けど、思春期、反抗期真っ盛りだろう。ほんとうにいってくれるだろうか。

10年は、決して短くはないけど、気がついたら経っていた。そのスピードで次の10年が過ぎるかとおもうと、手がかかる子どもとの時間とは、なんと儚いのだろう。子を世話しているようでいながら、実は親がかまってもらっている。いつもより広くて静かなリビングで、長男に、生まれてきてくれてありがとな、と今夜は素直に言えた。